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2024.01.25 政策研究

第6回 民主主義と議会①─民主主義の目的、習熟、限界、現実

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民主主義の現実

 しかしながら、本稿においても述べたように、民主主義の現実には課題が少なくありません。インテリや知的エリートと呼ばれるような人々も群衆になりえます。山本圭は、「独立していたときには、恐らく教養のある人であったろうが、群衆に加わると、本能的な人間、従って野蛮人と化してしまう」というギュスターヴ・ル・ボンの『群集心理』を引用しながら、インテリや知的エリートと呼ばれるような人々も群衆の一部になりうるとしています(山本 2021:71)。そして、扇動家やデマゴーグによって大衆の意志は容易に創造(捏造(ねつぞう))されると考えます(山本 2021:74)。
 このことは、政治家や職員(自治体官僚)も野蛮人と化する可能性があり、大衆の意志を創造(ねつ造)しうるということを意味しています。第二次世界大戦前から戦中のドイツにおけるヒトラーやアイヒマンの行動、日本における少なくないであろう軍人幹部・マスコミ(ジャーナリスト)・教員の行動を思い浮かべると想像が容易となります。ミャンマー、タイ、ウクライナ、イスラエル等をめぐる紛争を見ても明らかといえるのではないでしょうか。
 ところで、今の日本社会においては、政治家、職員、ジャーナリストが野蛮人と化し、大衆の意志を創造(ねつ造)しうるということは「ないか」と問われれば、近年劣化が激しいとされ不祥事の発生やそれに関わる事件が起きたことを考えれば、「ない」とはいえず「ある」としか答えられないのではないでしょうか。都合の悪い問題が争点化しないよう、あらかじめ封じ込める非決定権力(山本 2021:87)は、反自由主義的、反民主主義的であるといえます。例えば、市民投票において投票率があらかじめ定めた一定の率より低い場合は開票しないということも、都合の悪い問題(=市民投票の結果)を争点化しないよう、あらかじめ封じ込める非決定権力の行使といえるのではないでしょうか。このようなことは、反自由主義的・反民主主義的であり、避けるべきことです。
 また、市民投票は、一般的に市民運動・政治運動の結果ないし(途中)経過として行われますが、どのような市民運動・政治運動が望ましいのでしょうか。國分功一郎によれば、政治運動が一過性のものであってはならないが、運動の継続はしばしば手段の目的化をもたらし問題を生じるとしています(國分 2013:76)。さらに運動に携わる人は、そのメジャーな流れをつくっている陣営ときちんと折衝できなければならないと述べています(國分 2013:80)。市民運動を行う上では、①理念的であること、②マスコミとうまく付き合って世論をつくること、③アタマだけでなく、カラダが感じて動き出す運動を求められること、④理論的に事実を説明できること、⑤手短に説明できること、を要点として挙げています(國分 2013:84-89、100-101)。これらの指摘は、市民運動の交渉相手の存在や、地域社会との関係性等を踏まえれば妥当といえるでしょう。少なくとも、こういうことが「ありうる」「求められる」といえるのではないでしょうか。また、このことは、運動する側だけでなく、運動の対象(相手)である自治体政府や国にも求められます。マスコミにも同じことがいえるでしょう。

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