2023.12.25 政策研究
第45回 固有性(その2):地理
東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之
自治体の宣伝・説明
自治体職員は、いろいろなところに出かけて説明に行くことがある。その際、自分の自治体の住民向けの「出前講座」や住民説明会で、自分の自治体の説明をすることはあまりないかもしれない。当該自治体の住民として「当然」に知っているだろう、という前提が存在するからである(1)。しかし、地域外に出かけて講演や説明や講義や陳情などを行う場合には、自分の所属する自治体(ただし、これは団体・行政組織としての自治体)が、どのような自治体(ただし、しばしば、団体としての自治体から見れば環境である地域社会や住民団体としての自治体)にあるかを説明して、宣伝することが普通である。
このときに説明される項目は、
○位置(日本(白)地図の中の当該自治体の位置。東経・北緯、ときに標高で表示する
こともある。「140度40度」や「標準時子午線」などもある。また、東京都心や大
都市ないしは空港からの方向性・距離・交通アクセス(鉄道・道路交通など)の便)
○人口(しばしば、日本で何位、ときに、高齢化率や外国人住民人口など)
○面積(日本一狭い/広いから何位又は、○○と同規模)
○幅(東西○キロ、南北○キロなど)
○特産品(ときに、ふるさと納税の目玉返礼品)
○有名観光地、いわゆる「聖地」(映画・テレビ・小説・マンガなどのロケ地・舞
台)、有名イベント
○有名出身者
○公式ゆるキャラ
○産業の特徴
○地形(海岸・半島・島・内陸、河川・湖沼、平野・台地、盆地、山地・山脈・丘陵・
段丘・崖線・谷など)
○気候(温暖、豪雪、日本有数の暑さ・寒さなど)
などがある。自治体の特徴を説明するときに、必ずしも、地方公共団体・行政組織としての自治体政府や、政治体制のあり方を解説するとは限らない。
これらの事項は、しばしば、地理と呼ばれる分野に含まれることが多い。自治体を説明するときに、地理的状況を説明し、それによって、当該自治体の固有性が特徴付けられることがある。