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2023.12.25 政策研究

第5回 「社会の変容」「意思決定の合理性」と議会

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「民主主義の資本」としての社会運動・市民運動と議会

 社会が変わるときには、往々にして社会運動や市民運動が、「はじめの一歩」や「大きな力」になったことがありました。例えば、「公害対策基本法」の制定(1967年8月3日公布・施行:環境基本法施行に伴い1993年11月19日廃止)や、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」の制定(2018年5月23日公布・施行)では、それらの運動が果たした役割は小さくなかったといえるでしょう。
 その過程においては、様々な混乱や葛藤も見られましたが、篠原一は過度の実力行使によって明らかに違法性を持つものでない限り、新しい社会運動は正当性を持つとし、社会運動はバラバラの個人の間に連帯をつくり、人々の内に社会化の芽を植えつけ、また積極的な社会参加の気風をつくるという点でも、それは民主主義にとってプラスの意味を持つものであったと評価し、そのような意味で社会運動は「民主主義の資本」(篠原 2004:61)といわれたのだと2004年の段階で述べています。ここにいう篠原の社会運動には、市民運動も含めて考えることができるでしょう。
 ところで、松下圭一の「政策とはまず個人誰もの日常生活から出発することになる」(松下 1991:30)という『政策型思考と政治』の著名な言葉を出すまでもなく、社会運動や市民運動も、はじめは個人ないし少数者の運動から始まるケースが少なくないでしょう。このことは、土山希美枝の「困っている人」ないし「ほっとけない人」(土山 2018:69)のイメージと一部重なる部分がありそうです。
 それでは自治体議会は、このようなケースを含め社会運動や市民運動の存在を知ったら、どのように関わったらいいのでしょうか。まず議会として、どのような対応をするかということを決めなければなりません。そのためには、議会で関係者〈市民、行政、国や民間部門の関係者、専門家等)を含め議論することが大切です。
 次に、必要があれば、運動の争点になっている事項について決議します。その上で国(衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、各省大臣等)宛てに意見書を提出することが考えられます。全国組織である全国市議会議長会ないし全国町村議会議長会、あるいは全国都道府県議会議長会を含めた3議長会での議論を経ての各議長会から国への意見提出も考えられるでしょう。もちろん、自らの地域において、条例を制定改廃するなど市民に身近な政府として、力を発揮することも重要です。

「社会現象の両義性」「人の行為の両義性」

 さて、篠原がいうように、社会現象には常に「プラス面(ポジティブなもの)」と「マイナス面(ネガティブなもの)」が入り組んでいます(篠原 2004:152)。また、社会現象は「人の行為」によって影響を受けますが、人の行為の一つずつにも、社会現象と同じように「プラス面」と「マイナス面」の双方があります。すなわち、これら「社会現象」や「人の行為」には両義性があります(表1、表2参照)。したがって、これらについて考える場合には、十分に考え慎重に行動することが求められます。
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表1 社会現象における「プラス面」と「マイナス面」の例

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出典:筆者作成
表2 人の行為における「プラス面」と「マイナス面」の例

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