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2023.11.27 政策研究

第4回 「市民」と「議員が市民から求められる姿勢・行動」

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結び

 本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で意識すべきものとして、「市民」や「議員が市民から求められる姿勢・行動」と、これらに関する事項等について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。

  1. 「市民」という言葉には、「自主的主体的に権利を行使し義務(責務)を果たすために活動する人」という意味を込めたいと思います。社会を良くするためには、自主的主体的活動をする人が必要です。
  2. 都市型社会における公共政策に対する市民の当事者性には、①社会のメンバーとしての側面、②社会における公共政策のユーザーとしての側面、③政府のオーナーとしての側面があります。
  3. 「現実の市民」が「規範概念としての市民」に近づくこと(=「市民化」ないし「市民の市民化」)は、社会を良くし地域を豊かにします。
  4. 「思い」が市民をつくり、その「思いはあたたかい声援により継続しうる」ということがいえそうです。また、市民が、一つひとつの「思い」「行動」「反省」「期待」を公にすることは、次の市民活動・社会活動や政治につながります。
  5. 所沢市民のパブリック・インボルブメントを含めた、自治基本条例制定に向けた取組み、記録をまとめるという営為は、市民自治型の政策・制度の開発の一つ、そして市民の品性・力量の醸成という市民文化の形成の一つといいうるものです。
  6. 議会・議員には、市民の活動が権力(政治家(議員・首長)や補助機関(職員))によって抑圧されることがないように、適正な当事者意識を持つとともに、関係者の不適切行動を制御することが求められます。
  7. 市民をより深く思考するためには、人の「良い面(長所・強さ)」「悪い面(短所・弱さ)」とその「背景・理由・経緯等」を考えておくことが必要です。
  8. 議員は、「どん底からの希望」を市民とともに燃やすことで、議会再生を諦めなくてよくなります。
  9. 市民と政府の関係においては、市民一人ひとりについて、複数政府(日本では基礎自治体(市区町村)、広域自治体(都道府県)、国、国際機構)との関係で、「複層関係性」があります(複数政府と市民の複層関係性)。この複層関係性については、「複数信託関係」と「非信託関係」があります。
  10. 「住民関係のある市民」と「住民関係のない市民」の間には、互いに連携・調整・制御が必要になります。「信託関係のある政府」と「非信託関係の政府」の間にも、互いに連携・調整・制御が必要になります。そのとき求められるのが、「大きな決定基準(判断基準)=メガポリシー」です。そして、「大きな決定基準(判断基準)」として、「その決定(判断)で人は幸福になれるのか」という視点が求められます。
  11. 社会運動(市民運動)は「民主主義の資本」です。
  12. 市民には、政府をはじめとする社会を「監視する能力」と「活かす能力」を発揮することで、地域を豊かにすることが求められます。
  13. 市民化した「現実の市民」の姿は、「行動する市民」「ふつうの市民」の循環・「それなりの市民」に見ることができます。
  14. 「議会・議員は聞くだけ」「聞くだけの議会・議員」といわれないためには、議会・議員が市民の声に対して、適切に応答することが求められます。具体的には、①市民と話し合うこと、②その話し合いの後に議会で討議すること(議会で討議するときにも、議場で関係市民の声を詳しく聴いたり、質問しながら訊くこと)、③市民に応答する時点では討議の経緯・結果・理由等を漏れなく示す、という議会としての政策が求められます。また、これらのことを、後日確認できるよう文書にして残すとともに、議会だより・ホームページ・SNSなどで周知する政策も必要です。
  15. 市民と議会・議員をつなぐ媒介(インターフェイス)機能を持つ意見交換会・議会報告会・議会だより・「議場傍聴席のあり方」も求められる政策となります。
  16. 「市民の保有する関係性」と「市民の保有する資源」には、様々なものがあります。しかし、これらには限りがあります。これらの限りあるものを誰もが得るためには、「分かち合う」ことが求められます。「分かち合う」ためには、「共感」が必要になります。それには、悲しみや喜びといった情念の原因を知ること、事実を知ることが大切です。
  17. 議員には、「市民として自主的主体的に権利を行使し義務(責務)を果たすために活動する人」であることが求められます。このような期待に応えるため、議員には「市民から求められる議員の姿勢・行動」を考え、実践し、市民とともに自らを評価することが重要です。


■参考⽂献
◇アダム・スミス〔訳:村井章子=北川知子〕(2014)『道徳感情論』日経BP社
◇今井照(2017)『地方自治講義』筑摩書房
◇篠原一(2004)『市民の政治学─討議デモクラシーとは何か─』岩波書店
◇神野直彦(2018)『経済学は悲しみを分かち合うために──私の原点』岩波書店
◇菅沼庸雄(2013)「委員長あとがき」所沢市自治基本条例を育てる会編著『市民が取り組んだ条例づくり 市長・職員・市議会とともにつくった所沢市自治基本条例』公人の友社、140-142頁
◇土山希美枝(2018)「市民」石橋章市朗=佐野亘=土山希美枝=南島和久『公共政策学』ミネルヴァ書房、65-89頁
◇所沢市自治基本条例を育てる会編著(2013)『市民が取り組んだ条例づくり 市長・職員・市議会とともにつくった所沢市自治基本条例』公人の友社
◇廣瀬克哉(2013)「所沢市自治基本条例と市民の記録の意義~曲がり角に立つ郊外都市の市民自治への取り組み~」所沢市自治基本条例を育てる会編著『市民が取り組んだ条例づくり 市長・職員・市議会とともにつくった所沢市自治基本条例』公人の友社、6-16頁
◇松下圭⼀(1991)『政策型思考と政治』東京⼤学出版会
◇山本圭(2021)『現代民主主義』中央公論新社

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編集 者

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