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2023.10.25 政策研究

第43回 協調性(その6):遠隔協調

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共通型遠隔協調・取引型遠隔協調

 遠隔の自治体の間で、課題・利害を共有することで、遠隔協調性が成立することがある。共通型協調といえるだろう。上記の自治体間連絡協議会などは、このような遠隔協調の一種である。ただし、多数性で論じたのは、このような連絡協議会は、通常は多数の自治体を組織化し、一種の圧力団体として活動することが多いからである。同時に、共通の課題・利害に向けた、遠隔地の自治体相互の協調でもある。
 また、姉妹都市なども、通常は相互交流を目指すもので、交流自体を共通の利益として考えている遠隔協調であろう。姉妹都市を結ぶ起因にはいろいろな事柄があり得る。状況や環境が似ているとか、歴史的にゆかりがあるとか、いろいろなきっかけがあろう。
 取引型協調は、自治体間で課題・利害が一致するというよりは、相互に足りないところを補い合う取引関係を含む遠隔協調である。つまり、AはBに足りないところを持ち、BはAに足りないところを持てば、遠隔協調により、A、B間で相互利益を増進することができる。もっとも、取引の成立自体を共通の利益といえば、共通型の一種ということもできよう。
 例えば、大都市圏のAと地方圏のBで、Aが保養所や林間学校・臨海学校という施設を持つだけではなく、Bに向かって住民や児童生徒が訪れて、Bでの生活体験をすることができれば、Aにとってメリットがある。Bにとっても、こうした交流人口によって、地域活性化などにつながるかもしれない。また、Bの住民や児童生徒が大都市圏のAを訪れることもできよう。さらに、こうした関係で、物販・観光促進や留学・二地域居住につながるかもしれない。移住・定住が住民の奪い合いであればゼロサムの対立であるが、二地域居住や留学・短期滞在の交流人口であれば、相互にメリットになる。
 もっとも、こうした取引関係は、公平なものになるとは限らない。一般に、大都市圏の自治体Aには財政力はあるが、土地がない。そのため、入所施設や廃棄物最終処分場や墓地をつくることができない。そのため、こうした施設を遠方に求めることになる。このときに、自治体Bとの協調があれば、施設を設けることができる。地方圏の遠方の自治体との関係が対等であれば、こうした施設の受入れについて、自治体Bはメリットがある限りで応じることになる。例えば、自治体Aが設置する老人入所施設ができれば、自治体Bでの介護・看護その他の雇用が増える、などという考え方である。しかし、両者の取引関係が対等ではなければ、経済支援と引き換えにした、自治体Aによる老人押し付けの「姥(うば)捨て」と批判されることもあろう。いわゆる「生涯活躍のまち(CCRC)」構想が実現しにくい構造がある。
 実際、大都市圏のために必要と考えられる迷惑施設は、しばしば地方圏に建設されることが多い。その意味で、大都市圏と地方圏は取引関係に入り得る。しかし、通常、こうした施設は民間事業者や国が設置することが多く、大都市圏の自治体が自ら設置することはあまり見られない(2)。実質的な取引関係にありながら、不公正取引と批判されやすいので、大都市圏の自治体は、地方圏の自治体と、明示的な遠隔協調の関係を結ぶことを、回避しているといえよう。

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