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2023.10.25 政策研究

第3回 地方分権の「メリットと必要性」、政策実現の「困難性と方策」

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政策実現の「困難性と方策」

 政策の決定は、「問題の流れ」「政策の流れ」「政治の流れ」という三つの流れが合流した際に行われるといわれています。これが「政策の窓モデル」の考え方です(伊藤 2015:63-64)。しかし、そのうちの一つでも欠けてしまうと、政策の決定にはたどり着かない状況に陥ることになります。例えば、仮に「問題の流れ」や「政策の流れ」があったとしても、「政治の流れ」がないと政策は実現しないことになります。
 「政治の流れ」をつくるためには、「俺はこの議会のドンだ」「1期生のくせに」「あの人(ドン)がいる間は無理だ」というような議員間の階層意識を打破することが求められます。また、相手の政策選考や政策知識等が分からないという「隠された情報」や、相手がどのような行動をとっているのかが分からないという「隠された行動」により生ずる、議員間の「情報の非対称性」を縮減することが大切です。このことは、政策実現を図るためには、様々な顕在的あるいは潜在的な問題に対応することが必要であることを示しています。
 このような問題を解決するためには、全議員ないし委員会のメンバーが、あるいは会派のメンバーが、市民等の政策の関係者や現場あるいは視察研修先を同じ目で見ること、同じ研修を受けることが有益なこともあるでしょう。そのことにより、「問題の流れ」「政策の流れ」「政治の流れ」という三つの流れがそろうことがあるかもしれません。なぜなら、議員が一緒に行動することで「問題の流れ」や「政策の流れ」についての理解を深めると同時に、議員がお互いを知り人間関係を豊かにすることで、「政治の流れ」をつくりうることがあるからです。豊かな人間関係は、理にかなった「話し合い」を形成し、議員個々の力学によるのではなく、公正な仕方で政策を決定することにつながります。
 ところで、基礎自治体と国、基礎自治体と広域自治体、あるいは基礎自治体と基礎自治体の間において「問題の流れ」「政策の流れ」「政治の流れ」が合致することは、一つの自治体内で三つの流れが合致するよりも難易度が高いといえるでしょう。それは、アクターの存在目的とアクターの持つ資源(権限・人員・財源・情報・時間等)に相違があるからです。その難易度を下げるためには、アクター間の「話し合い(対話)」が必要となります。「話し合い(対話)」は「市民のための政治」の模索につながります。
 なお、「話し合い(対話)」は、話し相手との共有できる価値を探りつつ行うこと、そのためには「聴き合い(身を入れて相手の気持ちを確認すること)」「訊(き)き合い(=尋ねて相手の気持ちを確認すること)」が求められます。それは場合によっては、迂遠(うえん)とも見える実践ですが、各アクターが「全方位的な対話」を重ねるためには、避けて通ることはできません。

地方分権は、国からの「他律性」を緩和し、自治体の「自律性」を高める

 地方分権は、金井利之が述べるように、自治体政府にとって国からの「他律性」を緩和するものです。しかし、それは必要条件であって十分条件ではありません。国からの「他律性」は弱まっても、自治体政府自身の「自律性」が高まらなければ、結果として自治体は「無律性」に陥る可能性を秘めています。それゆえに、分権型社会においては、国による「他律性」の後退の空隙を埋めるべく、自治体政府による「自律性」の発揮が求められています。いわば、自治体政府の「自律性」を高めることが、分権改革の十分条件であるといえるのです(金井 2018:79)(表3参照)。その意味では、地方分権の時代においては、「増えた権限」や全国自治体の「相互参照」を行使していない自治体政府(議会・行政)は、「無律性」に陥る可能性が高いといえるでしょう。
 自治体政府(議会・行政)が「無律性」に陥ることを避けるためには、自治体政府を構成する議会と行政がともに「自律ある自治体政府としての当事者意識」を持つとともに、市民が自治体政府(議会・行政)を制御する「自律ある市民としての当事者意識」を改めて持つことが大切です。これらの二つの「自律ある当事者意識」は劣化せずに、日常的に機能していることが求められます。
 なお、議員・首長・職員には、自分の役割や長所を認識することが必要ですが、そのことを単に誇ったり、うぬぼれることがあってはなりません。そのことは、市民や自治体関係者、ないし自治体関係者間の意識の乖離(かいり)、やがては不信につながります。「傲慢さ」や「不遜さ」は、決して許されないのです。
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出典:筆者作成

表3 市民を含む自治体と国における「自律性・他律性・無律性」の関係

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