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2023.10.25 政策研究

第3回 地方分権の「メリットと必要性」、政策実現の「困難性と方策」

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提案募集方式

 地方分権改革については、従来、地方分権改革推進委員会の勧告に基づき、国において事務・権限の移譲及び地方に対する規制緩和等が進められてきた時期がありました。また、地方分権改革有識者会議は、「個性を活かし自立した地方をつくる~地方分権改革の総括と展望~」(2014年6月)において、今後の地方分権改革については、個性を活かし自立した地方をつくることを目指し、地方の発意に根ざした新たな取組みを推進すべきであるとしました。
 これを受け、2014年から「地方分権改革に関する提案募集(提案募集方式)」制度が導入されました(https://www.pref.kanagawa.jp/docs/gz8/teianbosyu/index.html#:~:text)。自治体からの提案により実現した例としては、例えば表2のようなものがあります。あなたの自治体でも、このような取組みが必要であるかを考えることが議会には求められます。
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出典:神奈川県ホームページ「提案募集方式」(https://www.pref.kanagawa.jp/docs/gz8/teianbosyu/index.html#:~:text〔2023年10月8日確認〕)

表2 自治体からの提案(提案募集方式)で実現した例

 なお、提案募集に際しては、提案内容を実施する行政が中心となり、国や民間の関係者と交渉することになります。そのとき、行政が知恵を活かし、ひるまず交渉力を発揮できるよう、議会が市民とともに行政を後押し(支援)することが必要です。
 ただし、提案は、提案する自治体の政治家・職員や提案を受け検討する国の関係者が、市民の都合を顧みず、自らの都合だけがよくなるように規制を変更・解除すること(レントシーキング)があってはなりません。このような取組みは、齋藤純一・田中将人がいうように、公共的な政治文化を痩せ細らせ、健全なコンセンサスをむしばむことつながるからです(齋藤=田中 2021:177)。

多方位から多様な人が見ることで「環境変容」は予測しやすくなる

 望ましい政策を考えるには、「現在から将来を見た政策」と「将来から現在を見た政策」の双方を検討することが必要です。また、その政策をより適切なものとするためには、「過去」から「現在」までの歩みを振り返る「過去から現在を見た評価」と、「現在」から「過去」に段階的に遡る「現在から過去を見た評価」を行うことが求められます。そうすることにより、見えにくい課題、見えにくい時代潮流、見えにくい地域特徴が可視化できます。これらが可視化されなければ、適切な政策過程は成立しません。また、それらの取組みには、多くの人が関わることが大切です。多方位から多様な人が見ることで「問い」と「気づき」が豊かになり、「環境変容」が予測しやすくなるでしょう。
 自治体議会の活動においても、このような取組みが求められます。自らの議会の過去の取組みを再考することからスタートすることも一策です。例えば、これまでの議会活動で「良かった点・悪かった点」「未決の問題」等を取り上げ、話し合いを始めることもよいでしょう。そのとき、議会報告会、議会モニター、議会アドバイザー等を利用しながら市民・議会(議員)・専門家等が多角的に取り組むことは、より効果を上げるでしょう。
 なお、議会内(議員間)に限って考えた場合は、例えば、全議員ないし委員会のメンバーが、あるいは会派のメンバーが、取り組もうとする政策の関係者や現場あるいは視察研修先を同じ目で見ること、同じ研修を受けることも肝要です。もちろん、自治体(市民、自治体政府(議会・行政))側だけでなく、国や民間事業者などのアクターが、現場や視察研修先を同じ目で見ること、同じ研修を受けることが有益なときもあります。これらの取組みは、現状認識を一層高めるとともに、優れた政策をつくり、その実現可能性を増大することになります。
 ところで、今日の社会は、持続可能な開発目標(SDGs)を達成し、貧困や不平等、気候変動、環境劣化、繁栄、平和と公正など、私たちが直面する諸課題を解決することを求めます。しかし、SDGsの達成は、現在における私たちの行動を変容させないと容易ではないでしょう。齋藤・田中は、「ジョン・ロールズが正義にかなった社会にとって経済の成長は必須の要件ではないという見方を示し、むしろ、人びとが諸世代にわたって価値があるとみなしてきた事柄─環境、文化、制度など─を後の世代に向けて保全し、継承することの重要性を指摘」していたことは強調しておきたいと述べています(齋藤=田中 2021:167)。失われた30年が継続している日本の経済状況にあっても、このような思考の転換が求められているのかもしれません。
 思考を転換した政策としては、図2に示したようなものが考えられます。これらの取組みは、先駆政策として全国の自治体等で実践されているものもあります。それは、市民や関係者と連携して、経済成長(繁栄)を第一に考えるのではなく、貧困や不平等、気候変動、環境劣化、平和と公正などの実現に重きを置いた政策です。これらの政策は、倫理を再確認し、その再確認した倫理を反映したものといえます。
Jichitaigiin_Hatsugen_zu2出典:筆者作成

図2 求められる工夫した政策(再確認した倫理を反映した政策)

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