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2023.09.25 議会運営

議会の定例会の招集告示がされたが感染症のまん延によりほとんどの議員が招集日に議場に参集できない場合どうしたらよいか/実務と理論

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鹿児島県総務部市町村課(前総務省自治行政局行政課) 山本燿之介

1 はじめに

 昨年12月にとりまとめられた、第33次地方制度調査会答申において、「新型コロナウイルス感染症のまん延等に際して、地方公共団体が必要な対応を行うため、議会においては、条例、予算、国への意見書等の審査や議決が数多く行われて」おり、「大規模災害、感染症のまん延等の事態においても、住民のニーズを適切に汲み取り、納得感のある合意形成を行う観点から議会が果たす役割は大きい」との認識が示された。
 今後、我が国全体の人口構造は大きく変容し、大都市圏を含め、全国的に人口減少と少子高齢化が進行し、地方公共団体の経営資源がますます制約される一方、住民ニーズや地域課題は多様化・複雑化し、地域において合意形成が困難な課題が増大することが見込まれるが、そのような中で、資源制約を乗り越え、持続可能で個性豊かな地域社会を形成していくためには、地域の多様な民意を集約し、広い見地から個々の住民の利害や立場の違いを包摂する地域社会のあり方を議論する議会の役割がより重要となる。
 一方で、近年、新型コロナウイルス感染症のまん延や災害の激甚化・頻発化等により、多くの議会の議員がその影響を受け、議会に出席できなくなるような場合も想定されるところである。
 そこで本問では、議会の定例会の招集告示がされた後、感染症のまん延によりほとんどの議員が招集日に議場に参集できない場合、どのような対応が考えられるかについて、検討する。なお、文中意見にわたる部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。

2 地方議会の定例会及び臨時会について

 普通地方公共団体の議会は、定例会及び臨時会で構成されていることが多い。定例会は、付議事件の有無にかかわらず、定例的に招集される会議であり、毎年、条例で定める回数招集しなければならないこととされている(地方自治法(昭和22年法律67号。以下「法」という)102条1項及び2項)。一方で、臨時会は、必要があるときにおいて、特定の事件を審議するために招集されるものであり、あらかじめ付議事件の告示が必要とされている(法102条3項及び4項)。
 この点、第29次地方制度調査会答申において、一層住民に身近な議会を実現し、柔軟な議会運営を可能とする観点から、「長期間の会期を設定してその中で必要に応じて会議を開く方式を採用することや、現行制度との関係や議会に関する他の諸規定との整合性に留意しつつ会期制を前提としない方式を可能とすることなど、より弾力的な議会の開催のあり方を促進するよう必要な措置を講じていくべきである」との考え方が示された。
 そして、上記の答申等を踏まえた平成24年の法改正により、普通地方公共団体は、条例で定めるところにより、定例会及び臨時会とせず、毎年、条例で定める日から翌年の当該日の前日までを会期とする「通年の会期」を採用することができることとなっている(法102条の2)。

3 議会の招集について

(1)議会招集と告示
 普通地方公共団体の議会は、普通地方公共団体の長が招集することとされている(法101条1項)。「招集」とは、議会が活動を開始する前提として、議員を一定の日時に一定の場所へ集合することを要求する行為であり、招集を行う権限は一般的には長に専属する。この招集は、議会が「成立」している場合でなければ行えず、「成立」とは、実際に存在している議員が当該議会の議員定数の半数以上であって、招集行為があれば、法113条の規定により会議を開くことができる状態にあることをいう。
 なお、「通年の会期」を採用した場合の招集については、条例で定める日(会期開始の日)の到来をもって、普通地方公共団体の長が当該日にこれを招集したものとみなすこととされている(法102条の2第2項)。ただし、議員の任期満了や議会の解散等により会期が終了した場合においては、長は、これらの事由により行われた一般選挙により選出された議員の任期が始まる日から30日以内に議会を招集しなければならないこととされている(同条3項及び4項)。

 また、招集は、告示により行うが、告示は、開会の日前、都道府県及び市にあっては7日、町村にあっては3日前までに行う必要がある。ただし、緊急を要するときは通常の告示期限を必要としない(法101条7項)。すなわち、告示そのものは必要であるが、定められた日数の余裕をもって告示しなくてもよいこととされている。
(2)議会招集期日の変更
 もともと長が議会招集の告示をした後は、長が議会を優位に運営することを意図して、恣意的な招集日の変更がなされないよう、招集日の変更はできないと解されてきた。このため、長が議会招集の告示をした後は、その招集期日を変更することはできないことと解されていた(行政実例昭和26年9月10日地自行発273号)。
一方で、近年、大規模自然災害の頻発、新型コロナウイルス感染症の流行等により、招集の告示後、招集日に議員の応招が困難な事例が生じている。
 これを踏まえ、昨年12月、法が改正され、招集の告示をした後に当該招集に係る開会の日に会議を開くことが災害その他やむを得ない事由により困難であると認めるときは、当該告示をした者は、当該招集に係る開会の日の変更をすることができることとされた。 また、この場合において、恣意的な招集日の変更がなされないよう、変更後の開会の日及び変更の理由を告示しなければならないこととされた(法101条8項)。
 なお、「やむを得ない事由により困難であると認めるとき」とは、新型コロナウイルス感染症等の感染症のまん延や、大規模自然災害に伴う広範囲にわたる交通の途絶等により、議員の応招が困難な場合を指すと考えられる。

4 設問の検討

 議会の定例会の招集日に、感染症の発生によりほとんどの議員が議場に参集できない場合については、感染症のまん延が法101条8項の「やむを得ない事由により困難であると認めるとき」に該当すると考えられるため、同項に基づき、長は、招集日を変更することができる。
 一方、感染症のまん延の収束時期が見通せず、変更後の開会の日を定めることが難しいこと等を理由に、議会の招集の告示後、特段招集日を変更しない場合も考えられる。その場合、招集の日にこれに応じて参集した議員が定数の半数に達しない場合は、当該定例会は流会となると解される。なお、定例会は、法102条2項の規定により条例で定められた回数招集すればよいため、招集しても応招議員の数が少なく、定足数を欠き会議を開くに至らないときも1回と計算して差し支えないと解されている。
 しかしながら、審議日程を確保し、もって議会における充実した審議を確保する観点からも、可能な限り法101条8項による招集日の変更を行ったり、やむを得ず流会になった場合には臨時会の招集を行うなどの工夫を行うことが望ましいと考えられる。ただし、臨時会については、特定の事件に限り、これを審議するために招集されるものであって、団体の事務全般について執行機関の見解をただす趣旨での質問(いわゆる一般質問)ができないことに留意されたい。

5 おわりに

 以上、議会の定例会の招集告示がされた後、感染症のまん延によりほとんどの議員が招集日に議場に参集できない場合、どのような対応が考えられるかについて検討を行った。本問での検討が、合議制の住民代表機関として地域の民主的な合意形成を進め、民意を集約して団体意思を決定するという重要な役割を有する住民自治の基盤たる地方議会における適切な事務遂行の一助となれば幸いである。

(※本記事は「自治実務セミナー」(第一法規)2023年8月号より転載したものです)

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