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2023.09.25 政策研究

第2回 「二元代表制」と「議員に求められる能力」

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結び

 本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で意識すべきものとして、「二元代表制」や「議員に求められる能力」と、これらに関する事項等について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。

  1. 二元代表制には、「議論と政策」「議論と能力」「外部圧力と対応」の視点から見ると、強じん性とぜい弱性があることに留意する必要があります。
  2. 議会の権限は大きい・より大きくできる・大きくなっているが、権限を行使していない議会と、権限を使っていない残念な議会があります(議会の二極化)。
  3. 二元代表制は議会と行政の関係だけではありません。そこには、市民が関係しています。市民は、議会や行政に信託すると同時に、議会や行政を制御(市民制御)します。その上で、議会と行政が相互制御(自治体政府内相互制御)・調整・連携する仕組みが二元代表制であることを忘れてはなりません。
  4. 市民制御は、二元代表制も民主主義(民主制)における代表民主制の一形態ですので、市民〈=被治者〉が政治家(議員・首長)〈=為政者〉を民主的に制御する必要があります。このような制御がなければ、「被治者と統治者の同一性」という民主主義の基本的考えが成り立たなくなるからです。
  5. 議員(議会)と首長(行政)の役割は、大別して、①「手続に関すること」と、②「構成員(議員や職員)の育成、シクミづくり、政策資源づくりを行うこと」を通して、市民の信託に応えること、併せて主権者教育を進めることと捉えることができます。ここでは、主権者教育が議会及び行政(選挙管理委員会を含む)の政策課題として抽出されました。
  6. 議員(議会)には、行政との(適正な)相互制御をするためのネットワークをつくり・活かすことが求められます。
  7. 議員や首長に権力の座を求めて厚顔無恥な行動をとらせることなく、議会や行政を適正に行わせるためには、「市民による制御」「自治体政府内〈議会・首長(行政)〉相互制御」が必要となります。
  8. 自治体が、「未成年の自治体」から「成年の自治体」になる(〈自治体の成人化/成熟化〉)ために、自治体関係者(市民、議員、首長・職員)には、自治基本条例、議会基本条例及び総合計画を、自治体の規範(ルール)・仕組みとして、つくり・実践し・見直し・活用することが政策課題として挙げられます。
  9. 地方自治についても「知は力なり」といえます。そして、地域や地方自治についての学習は、自治体関係者(市民、議員、首長・職員)にとって不可欠といえます。
  10. 議会(議員)が市民から失望され、信用を失ってしまうと、議員の「なり手不足」にもつながります。このことを防ぐためには、政治家である議員には、学習能力や自己主張能力が、基礎能力として求められます。その積み重ねが議会の能力を向上させることになります。
  11. 議会の能力には、「適正手続決定能力・適正手続実施能力」と「適正政策決定能力」が必要です。前者は後者の前提になる能力です。「広聴力」や「広報力」は、「適正手続決定能力・適正手続実施能力」を構成しています。今、政府(議会・行政)の「広聴力」や「広報力」を向上させることが、政策課題として挙げられます。
  12. 「広聴力」や「広報力」を発揮するには、「議会報告会(意見交換会を含む)」をはじめ、様々な手法があります。議会の試行錯誤が求められています。


■参考⽂献
◇今井照(2017)『地方自治講義』筑摩書房
◇大森彌=大杉覚(2021)『これからの地方自治の教科書〈改訂版〉』第一法規
◇東村山市議会ホームページ「議会報告会の開催」(https://www.city.higashimurayama.tokyo.jp/smph/gikai/katsudo/gikaihoukoku/index.html〔2023年9月6日確認〕)
◇松下圭⼀(1991)『政策型思考と政治』東京⼤学出版会

 

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