2023.09.25 政策研究
第2回 「二元代表制」と「議員に求められる能力」
議会(議員)と総合計画、「知は力なり」、学習の必要性
自治体議員には、ややもすると短期的視野・狭窄(きょうさく)的視野に陥る可能性があります。特定の顔見知りの人の顔が浮かび、早くその人を助けたいと思う気持ちがその可能性を高めるのかもしれません。また、4年に一度ある選挙がそうさせるのかもしれません。議員にこのような傾向があるとすれば、議員で構成される議会にも短期的視野・狭窄的視野に陥る可能性があるといえます。しかし、自治基本条例、議会基本条例及び総合計画は、議会がそのことを避ける自治体政策運営のツール(道具)になりえるし、議会が首長(行政)を制御できるツールともなりうるのです(図2参照)。
出典:筆者作成
図2 自治基本条例・議会基本条例・総合計画における市民・議会・行政の関係
自治基本条例・議会基本条例・総合計画による議会の行政制御は、政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)の全てに関わります。もちろん、制御できる比重は、議会と行政の権限により政策過程で異なりますが、決定過程での制御は、基本構想(近年では基本計画を含む自治体が増えている)の決定権を自治基本条例・議会基本条例・総合計画条例等により議会に明示的に与えていることもあり、議会の果たす役割は大きいといえます。また、議会は予算の決定権や決算の認定権を持つことから、予算決算と関係の深い実施計画や政策評価を通して総合計画の実施についても制御できるといえます。
ところで、大森彌・大杉覚は、「市民が役所との関係で適切な判断や行動をとることができるためには、役所自体についていろいろと知っていることが有利な条件となります。地方自治についても『知は力なり』といえるのではないでしょうか、そして、地域や地方自治についての学習は不可欠といってよいと思います」(大森=大杉 2021:ⅱ)と述べています。このことについては、例えば、異動したての新任の担当者よりも前任者の方が業務に詳しいでしょうし、異動したての新任の上司よりも部下の方が業務に詳しいことを経験した人は少なくないでしょう。そのようなときには、新任の担当者や新任の上司だけではなく、前任の担当者や部下にも併せて確認することで、事が進展することがあります。この例は「知は力なり」といえそうです。ここで述べた業務には、自治基本条例・議会基本条例・総合計画等も含まれます。
そして、「知が力」を発揮するためには、市民だけではなく自治体政府(議会・行政)も一緒に地域や地方自治について学習することが求められているといえます。議会は、行政にそのような取組みをすることを働きかけることも求められます。