2023.09.25 政策研究
第2回 「二元代表制」と「議員に求められる能力」
政治家の特性から見た「市民による制御」「自治体政府内〈議会・首長(行政)〉相互制御」の必要性
大森彌・大杉覚は、政治家について、「権力の座を求めて、地方の一地域といえども政治の世界に乗り出していく人物は大抵“五欲旺盛”“気力充実”で、並の人間ではないといってもよいでしょう。どちらかといえば、細心であっても自己反省の能力に乏しく、厚顔無恥といえるほどに自己顕示が強い人が多いようです。……住民にしてみれば、どんな災難をこうむるかわからないという心配が出てくるのです。それゆえ現行の制度では、この心配を取り除くため、政治のプロの地位を政治のアマチュアである一般有権者が許可する工夫(選挙やリコール)が講じられているのです。……逆に、政治のプロとしては、当選ないし再選をめざして集票活動に熱を入れることにもなるのです」(大森=大杉 2021:72-73)と述べています。
このことに関連して松下圭一は、「政治が市民による政府ついで制度・政策の制御となるとき、あらためて政治は市民の『可能性の技術』となる」(松下 1991:353)と述べています。大森彌・大杉覚がいう「政治のプロの地位を政治のアマチュアである一般有権者が許可する工夫(選挙やリコール)」は、松下がいう「市民の『可能性の技術』」の一部であると見ることができます。
議会の決定権限は本稿でも既に述べたように大きく、首長の実施権限も「行政委員会が行う特定の事項以外の事務処理及び担当する事務を処理するのに必要な規則制定」「議会への議案提案」「予算編成」「予算執行」「地方税などの課税及び徴収」「財産の取得及び管理」「他の執行機関の構成員の任命」「副首長以下の職員の任命」など大きいものです。そのため、議員や首長に権力の座を求めて厚顔無恥な行動をとらせることなく、議会や行政を適正に行わせるためには、「市民による制御」「自治体政府内〈議会・首長(行政)〉相互制御」が必要となるのです。
「未成年の自治体」から「成年の自治体」になるために:〈自治体の成人化/成熟化〉
本連載の第1稿(前稿)においては、「未成年の自治体(市民、自治体政府(議会・行政))」から脱出し、「成年の自治体(市民、自治体政府(議会・行政))」になるには、自治基本条例及び基幹的関連条例である議会基本条例の制定(改定・運用)が求められることを指摘しました。自治基本条例及び議会基本条例には、総合計画についての規定があるものが少なくありません。総合計画は、自治体政策の基本であり、自治体にとっては不可欠といえるものです。換言すれば、自治体が「未成年の自治体」から「成年の自治体」になる(=〈自治体の成人化/成熟化〉)ためには、自治体関係者(市民、議員、首長・職員)には、自治基本条例、議会基本条例及び総合計画を、自治体の規範(ルール)・仕組みとして、つくり・実践し・見直し・活用することが求められるでしょう。