2023.08.25 まちづくり・地域づくり
第6回(最終回) 「活動人口」を創出するための10のキーワード ~人口減少時代における新しいまちづくりの形
3 活動人口創出の第一歩
人口減少時代のまちづくりには活動人口が必要だと述べてきた。では、どうやって活動人口を創出していくのか。ここでは、活動人口創出の第一歩を紹介していく。
(1)地域の活動的な人を探す──自分自身が小さく始めてみる
松木の研究では、全国各地の地方創生の好事例から、活動人口の創出には、①人的資本の呼び込み、②価値共創、③自分ごと化、の3要素が必要だということが得られた。活動人口を創出するためには、人的資本の呼び込みが必要となる。しかし、一朝一夕に域外から人的資本が集積するわけではなく、やはり第一歩目はその地域にいる人たちの第一歩だと考える。
地域には、既に何かしらの地域活動やまちのために活動をしている人が必ずいるはずである。「地域の活動的な人を探す」ことが第一歩である。そして、その活動に寄り添い、若手議員であれば自身も参加し、経験のある議員であれば自身の経験やネットワークを活用して、その活動を可視化(見える化)し広げていってあげてほしい。そうすることで、活動が活動を呼び、域外から人的資本を呼び込むことにもつながっていく。その結果、新たな価値共創が起こり、活動人口が創出されていく。
もし「自身の地域には誰も活動的な人がいない」、あるいは「地域活動をしている人が見当たらない」という場合は、本連載の読者と想定している議員自身がまちづくりのアクターとして、地域活動を始めることを進言したい。きっとその一歩からまちが変わっていくはずである。
(2)プロセスの共有を大切にする
活動人口の創出には、先述した①人的資本の呼び込みに加え、②価値共創、③自分ごと化も必要である。価値共創とは、地域のアクターたちの営みが資源統合されることによって創出されていくことは第3回で述べた。
もう少し具体的にいえば、前述の地域活動などを通してアクターたちが交流しコミュニケーションするプロセス(過程)で、それぞれの資源が統合されていく。そういった意味では、参加型のイベントではなく、運営型、体験型のイベントを一緒になって開催するといった手法は効果的である。
また、こういった地域活動を行うプロセス(過程)で当事者意識が芽生え、自分ごと化が始まっていく。価値共創のプロセスの中で、住民はシビックプライドが醸成され、関係人口などのまちに関わるアクターはエンゲージメントが高まる。これらの活動により、当事者意識を持ち、まちが自分ごと化され、それぞれの人口は活動人口としてさらに活躍していく。
このことからも、議員の皆様には、ぜひ域外のアクターが飛び込める余白づくりや地域のアクターが輝ける機会を創出することに尽力していただきたい。
これまでのような、自治体がまちを管理しマネジメントする時代は終わりを迎えつつある。これからのまちづくりは、すべてのアクターが主体であり主役である。そうでなければ、人口減少の大波に飲み込まれてしまう。自治体、住民、企業、議員それぞれが、それぞれの強みを出し合い、活動人口となることで、そのまちのまちづくりは常に変化していくことが可能である。
「自分たちのまちは自分たちでつくる」という思いを持った人たちが集まり、楽しんでいるまちは、きっとこの先も、持続発展可能なまちであり続けるだろう。