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2023.08.25 まちづくり・地域づくり

第6回(最終回) 「活動人口」を創出するための10のキーワード ~人口減少時代における新しいまちづくりの形

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2 関係人口ではなく「活動人口」が大事

 地方創生の進展とともに注目された概念に「関係人口」がある。総務省の「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会報告書(概要)」によると、関係人口とは「移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者」と定義されている。しばしば関係人口は「交流人口以上定住人口未満」といわれる。
 国は関係人口の定義を示しているが、各自治体の地方創生の取組みやシティプロモーション施策を確認すると、関係人口を交流人口と同じ意味で使用する事例がある。また、ふるさと納税やオンラインでの関係性を関係人口と称するケースもある。関係人口は多様であることが理解できる。
 近年、多くの自治体が関係人口の獲得に向けて動いている。図1は主要4紙における関係人口の記事数の推移である。右肩上がりで増加してきた様子が理解できる。読者の関わる自治体も、関係人口の獲得を目指して何かしらの施策を実施していると思われる。まさに「関係人口バブル」の発生である。
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図1 主要4紙における「関係人口」に関する新聞記事の推移

 今日、多くの自治体が関係人口に期待を寄せている。その中で違和感を感じるのが、「関係人口はすべて良い」という関係人口性善説に立っている点である。実は、関係人口は「良い関係人口」と「悪い関係人口」に大別できる。
 さらに、関係人口は4類型に分けることができる。図2は、関係人口のマトリクスである。縦軸に「地域との関係度」がある。横軸は「地域への貢献度」を置いている。図2の4象限から、関係人口は、①活動人口、②関心人口、③問題人口、④弊害人口、に分けることができる。本連載で注目したのは「活動人口」である。そして活動人口の存在こそが、人口減少時代のまちづくりを強くしていく存在と考える。なお、4類型の詳細については、牧瀬稔「良い関係人口と悪い関係人口~活動人口、関心人口、問題人口、弊害人口という関係人口の存在~」(議員NAVI 2022年6月10日号)を参照してほしい。
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図2 関係人口の4類型

 本連載は「活動人口」に焦点を当てた。繰り返しになるが、活動人口とは「地域に対する誇りや自負心を持ち、地域づくりにいきいきと活動する者」と定義できる。活動人口を創出していくためには、シビックプライド(Civic Pride)や郷土愛が有効である。
 シビックプライドとは、「都市に対する市民の誇り」という概念で使われることが多い。日本の「郷土愛」といった言葉と似ているが、少し異なる。郷土愛は「住民が自ら育った地域に対して抱く愛着や心情」である。すなわち、郷土愛は「自ら育った地域」ということが欠かせない。一方で、シビックプライドは「自ら育った地域」は関係ない。
 筆者(牧瀬)は相模原市出身である。筆者が持つ「相模原市が好き」という感情は郷土愛である。一方で、筆者は北上市や西条市などが好きである。この感覚は、筆者が北上市や西条市に持つシビックプライドになる。
 関係人口は「移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者」と定義されるように、単なる事象の一つである。関係人口を良い関係人口に変えるためには、人々の心(マインド)に働きかける必要がある。働きかける要素がシビックプライドであり、郷土愛である。人々の「地域が好き」や「まちを良くしたい」という思いが、関係人口を良い関係人口に変えていく。良い関係人口の一つの姿が「活動人口」である。
 活動人口を創出するためには、特に、共有・共感・共創がポイントであると考える。例えば、まずは自治体と住民等の「共有」からスタートすべきである。情報の「共有」、時間や空間の「共有」、思い出の「共有」などである。そして共有が「共感」につながり、共感の積み重ねが「共創」へと変化していく。共創の概念を体現化した一つの形が活動人口である。
 活動人口は、人口減少時代のまちづくりの中で有意義である。簡単なシミュレーションをしてみる。現在と未来がある。定住人口が100人から80人に減っていく。一方で、活動人口が20人から30人に増えれば、地域における活動人口率が上昇する(図3)。これは、人口が減っても、元気で価値ある地域になることを意味する。
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図3 活動人口の意義

 活動人口が多い地域は魅力が多いため、地域外から新しい人口を呼び込む可能性が高まる。人口が減少しても、元気で価値ある地域を創造し、持続発展性を確保するためには、「活動人口」にも注目していく必要があるだろう。

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