2 条例制定による効果について
アートの分野における全国初の「群馬パーセントフォーアート」推進条例は、全国のアーティストやクリエイターの方々から大きな注目を集め、群馬県はアートに積極的というイメージが急速に醸成されつつあります。
全国初の仕組みをつくることによって、群馬県のアートに対するメッセージを発信することになると考えられます。
3 今後の展望について
「2 条例制定による効果について」で述べたとおり、本条例は群馬県の文化審議会の委員や全国各地の行政機関、アーティストなどからも注目されており、今後の群馬県としての取組が重要になってくるとの意見をいただいています。
条例の制定はあくまで出発点であり、「群馬パーセントフォーアート」を官民連携で大きく育てながら、群馬県を「クリエイティブの発信源」としていきたいと考えています。そして、アートの力で県民が誇りと幸福感を持ち、群馬を元気にするため、芸術文化の振興に取り組むとともに、この全国初の試みを世界に向けて発信していきます。
(1) 群馬県中之条町で隔年開催される国際現代芸術祭。アーティストは特色ある山村地域に開かれたアーティスト・イン・レジデンスで滞在制作を行い、その成果を中之条ビエンナーレで発表します。第9回を迎える中之条ビエンナーレ2023では、国内外から創造的、革新的なアイデアやプロジェクトを持つ多分野のアーティストが作品を展示します(出典:中之条ビエンナーレホームページ)。
(2) 始動人とは、「自分の頭で考え、他人が目指さない領域で動き出し、生き抜く力を持つ人」のこと(出典:「新・群馬県総合計画」)。
○「群馬パーセントフォーアート」推進条例
令和5年3月22日
群馬県条例第5号
経済社会の成熟化、グローバル化、デジタル化、価値観の多様化に伴い、地域の差別化が困難な時代、群馬で他にはない魅力をどうしたら生み出すことができるだろうか。その答えの一つが、多様性や独自性の象徴であるアートである。
アートは決して特別な存在でなく、美術館で展示される美術品、街中の建物、製品のデザイン、商品のパッケージ、人々を楽しませるパフォーマンス等、様々なものがアートとなる。
アートを大事にすることにより、群馬県は、新しいことにチャレンジする人や事業者にとって、魅力的なランドマークとなる。
また、アートには生きる力、勇気、喜び、潤いなど、人々を心豊かにする様々な力が内包されている。観(み)る者を鼓舞するアート、悲しみを癒やすアートなど、アートの持つ様々な力を活用すれば、県民の幸福度の向上を図ることができる。
他にはない価値を持ち、人々を惹(ひ)きつける求心力を持つ「快疎」な群馬県を実現し、県民の幸福度の向上を図るため、アートの力を活用したい。
アーティスト支援として、アメリカで二十世紀初頭に生まれた「1パーセントフォーアート」は、今では欧米を中心に制度化されている。「1パーセントフォーアート」そのままではなく、その精神を生かしながら、群馬県が目指す考えに合致した、新たな「群馬パーセントフォーアート」制度を導入する。
まずは、次代を担う子どもたちを、アートに親しみ、自ら創造し考える力を持つ「始動人」となるよう育成する。アートの持つ多様性、独自性を身に付けた子どもたちは、アート以外の分野でも「始動人」となることができ、アートの鑑賞者、支援者にもなる。
次に、アーティストが、自立することができる環境を整える。才能と熱意があれば活躍できることを示すことで、アーティストを群馬の地に惹きつけることもできる。
さらに、アートが地域固有の歴史、風土、文化等の触媒となって、新たな価値を生み出し、地域経済の活性化を促す。
そして、県民、市町村、事業者が、アートの実践、支援及び鑑賞など、主体的に携わるとともに、地域経済の活性化で生み出された資金が、次のアート教育、アーティスト支援につながるアートの循環システム(エコシステム)を構築する。
最後に、これらを実現するため、群馬県として、予算の一定割合をアートに支出する。
官民共創の取組とクリエイティブな発想で、他にはない価値を持ち、人々を惹きつける求心力を持つ「快疎」な群馬県を、「群馬パーセントフォーアート制度」により実現するため、この条例を制定する。
(趣旨)
第一条 この条例は、他にはない価値を持ち、人々を惹きつける求心力を持つ群馬県(以下「県」という。)の実現及び県民の幸福度の向上をアートの力でかなえるための基本的事項を定めるものとする。
(定義)
第二条 この条例において「アート」とは、次に掲げるもの(デジタル技術をはじめとした先端技術(以下「デジタル技術等」という。)を活用するものを含む。)をいう。
一 文学、音楽、美術、写真、演劇、舞踊、メディア芸術(映画、漫画、アニメーション及びコンピュータその他の電子機器等を利用した芸術をいう。)その他の芸術(次号に掲げる芸術を除く。)
二 建築物等(住宅、住宅以外の建築物、公共土木施設その他の工作物をいう。以下同じ。)の形態、色彩、意匠、素材その他建築物等に付随する芸術
2 この条例において「パーセントフォーアート」とは、予算の一定割合をアートの振興に関する施策に充てるとともに、県民、市町村及び事業者が主体的にアートに携わり、地域において新たな価値を創造することにより、県民の幸福度の向上を図る取組をいう。