2023.08.10 議員活動
自治体法務検定演習問題を解いてみよう(その60)
正解及び解説
■基本法務
〔正解〕③(配点10点)
〔解説〕この問題は、民法の物権分野からの出題である。所有権とは、「法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利」(民法206条)をいう。したがって、①は妥当である。地役権とは、設定行為で定めた目的に従って、他人の土地を自己の土地の便益に供することができる権利のことである(民法280条)。例えば、自己の土地の便益のため、他人の土地を通行目的で使用する権利である。したがって、②は妥当である。抵当権とは、債権の担保として債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利をいう(民法369条1項)。③の記述は、質権の記述なので、妥当でない。地上権とは、工作物又は竹木を所有するために、他人の土地を使用することを内容とする権利をいう(民法265条)。したがって、④は妥当である。以上より、妥当でないものは、③であり、③が正解となる。(基本法務テキスト318~321,326~327頁)
■政策法務
〔正解〕①(配点25点)
〔解説〕①は最も妥当である。規制の緩和で第三者が影響を受ける可能性があるから、規制を強化する内容だけではなくこれを緩和する内容についても、意見公募をすることが望ましい。なお、規則の制定改廃についても、行政手続法46条によって同法6章の規定による意見公募手続に準じた措置を講じることが自治体に努力義務として求められている。②は妥当でない。執行細則上の基準はあくまで裁量権の最適行使をするための基準であり、個別事案では当該基準を機械的に当てはめることがかえって問題となる事案があり、そうした機械的当てはめで問題となる場合には、逆に個別事情考慮義務違反の違法な取扱いとなる。つまり基準逸脱事案については、個別事案の何をどのように考慮した結果の基準逸脱なのか、そのことに合理的な理由があったかどうかを評価すべきものである。③は妥当でない。確かに適法な行政事務が継続すれば審査請求は減少するであろうが、制度の変更や制度をめぐる環境の変化がなくても、個別の法執行の案件は異なるから、単純に審査請求の件数減少だけで法執行の善し悪しを判断することは適切ではない。④は最も妥当であるとまではいえない。後段の内容は妥当であるが、場合によっては、国が制定した国法の内容について改廃を求めることも必要となる。よって問題文の「国の法律や法律に基づく命令を所与とし」の部分について、選択肢①よりも妥当であるとまではいえない。(政策法務テキスト162~168頁)