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2023.08.10 政策研究

第1回 自治体の定義、自治体と議会の関係、自治体における主なアクターの特性、という発言に期待される含意と政策

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自治体におけるアクターの特性から見た課題解決の困難性

 自治体における主なアクターとしては、市民(団体・法人等や、域外在住の市民を含む)、自治体議会、自治体行政、国を挙げることができます。そして、これらのアクターには、「一人勝ちできない」という共通点があります。例えば、市民は短期的には「一人勝ち」したように見えても、一人では生きられないし、いい加減(よい加減ではない、悪い意味でのいい加減)な自治体議会・自治体行政であれば、リコールが起きることが考えられます。次の選挙で落選するかもしれません。国会議員の場合にはリコールの制度はありませんが、いい加減な活動をしていれば、やはり次の選挙で落選するかもしれません。
 そもそも、「一人勝ち」でなくとも、適正な自治体議会・自治体行政・国の活動を心がけていても、複数の人や組織にはコミュニケーションギャップが生じます。市民と市民、市民と議会、市民と行政、議会と行政、議員と議会事務局職員、行政と執行部職員、自治体政府と他の自治体政府、自治体政府と国、どの段階においてもコミュニケーションギャップが付いて回ります。けれども、議会において端的に見られるように、一つの事項(議案等)において、複数の会派が連携することで多数派となることは少なくないでしょう。このように、いくつかのアクターが組み合わさり、調整・連携することで、各アクターは力を発揮することになります。
 しかし、その実現のためには、乗り越える課題があります。例えば、①社会の固定化、病気や障がい等の発生、地域の衰退等による子育て・教育・勤労・所得など様々な格差の存在、②議員が市民から期待された活動と同じ内容の活動をした場合には、議員への関心は薄れること(期待不一致理論)、③「隠された情報」や「隠された行動」による本人・代理人関係の困難性(曽我 2014:23-24)、④自治体政府と他の自治体政府・国・国際機構等との政府間関係、などからアクターの適正な活動は難しくなります。これらの課題を現実的に完全にクリアすることは困難でしょう。
 また、根源的には、アクターの存在目的とアクターの持つ資源(権限・人員・財源・情報・時間等)が互いに食い違っていること、アクター間が戦争将棋状態(例えば、「AはBに勝ち、BはCに勝ち、CはDに勝ち、DはAに勝つ」ような状態)にあるからです。ただし、この戦争将棋状態は、各アクターが社会でなるべく円滑に暮らせるように積み上げてきた仕組みでもあります。市民、自治体政府(議会・行政)、国の関係もそうです。そして繰り返しますが、これらの関係者の間では長期的には「一人勝ち」はできません。

成年の自治体(市民、自治体政府(議会・行政))に求められる自治体基本条例・自治体議会基本条例の制定、「未成年の自治体」にならないために!

 松下圭一は、1996年の段階で、自治体基本条例について、「今後、日本の自治体は『日本国憲法』第8章地方自治を踏まえて、独自の〈基本条例〉を自治体レベルの基本法として策定していくことになるでしょう」(松下 1996:107)と述べています。このことは、自治体を地域の政府と見るならば、国レベルで国の基本法としての「憲法」があるように、自治体レベルでは、自治体の基本法である自治体基本条例(一般的な名称としては、○○自治基本条例・○○まちづくり基本条例・○○市政基本条例・○○自治体基本条例等)があり、その基幹的関連条例(注:基幹的関連条例については神原 2019:14を参照)としての自治体議会基本条例(一般的な名称としては、○○議会基本条例)が求められることになります。
 このような考え方に立てば、市区町村や都道府県において、自治体基本条例や自治体議会基本条例がなければ、それらは、「未成年の自治体」と呼ぶべきでしょう。「未成年の自治体」という言葉は、辻清明が『日本の地方自治』の中で、「新しい憲法がたとい地方自治の理念を市民手中に与えたとしても、それを活用するだけの能力を欠けば、かれらは権利主体になりえない未成年者に等しいのです」(辻 1976:39-40)と述べていることからヒントを得た筆者の造語です。

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