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2023.07.25 政策研究

第40回 協調性(その3):共同処理

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之

水平的協調性

 前回(第39回)に扱った国と自治体、あるいは、都道府県と市区町村の関係は、垂直的政府間関係である。これに対して、都道府県と都道府県の関係、あるいは、市区町村と市区町村の関係は、水平的政府間関係である。都道府県と異なる都道府県内の市区町村の関係は、水平とも垂直とも言い切れず、その両者の合成ベクトルのような斜めの関係であるともいえる。とはいえ、国─都道府県─市区町村の垂直的関係ではないという意味で、広義の水平的政府間関係といえるかもしれない。しかし、通常、水平的協調性を論じるときには、都道府県と都道府県、あるいは、市区町村と市区町村の関係が、念頭に置かれる。本論もそのように進めたい。

事務の共同処理

 原則として、各自治体は、自らの事務を自ら処理する。しかし、実際には、複数の自治体の関係の中で事務処理がされることがあり、こうした仕組みを事務の共同処理という。自治制度官庁の整理によれば、事務の共同処理方式には、一部事務組合、広域連合、事務の代替執行、事務の委託、機関等の共同設置、協議会、連携協約があるとされる。その制度概要は、一般に向けても、自治業界内向けにも、分かりやすくまとめられている(1)。このうち、一部事務組合と広域連合は、別法人(特別地方公共団体)の設立が必要であり、その他の方式は法人設立が不要な簡便な仕組みである。

共同処理と民主的統制

 個別自治体が、自ら事務処理をするのは、住民による民主的統制を(建前かもしれないが)確保するためである。自治体Xの事務αを当該自治体が処理しているならば、住民xは事務処理のあり方(ひいては政策判断)について、自らの意向を首長・議会を通じて実現することが可能である(図1)。しかし、共同処理の場合には、事務αについては、他の自治体Y又は共同処理のための団体・機関Zなどが関わってくるため、そうは単純ではない。自治体Xの事務αが、別の自治体Y又は共同の団体・機関Zを通じて処理されているときに、Y又は共同の団体・機関Zの事務処理のあり方などについて住民xに異論があっても、住民xにはその意向を自治体Y又は共同の団体・機関Zに実現させる民主的統制の手段がない(図2)。
 Jichitai_Gyouseigaku_zu001

図1

 Jichitai_Gyouseigaku_zu002

図2

 もちろん、住民xの世論に、Y又はZが自発的に応答することはありえなくはない。あるいは、Y又はZの処理の仕方に納得できなければ、自治体Xがいつでも事務αを取り戻せばよい。そもそも、自治体Xの首長・議会も、住民xの意向を反映しているとは限らない。制度的には選挙や解職投票があるが、住民が対立候補を擁立できなければ、結局は、住民xに応答的ではない自治体Xの為政者(首長・議員)も、居座り続けるものである。したがって、自治体Xにおける住民xの民主的統制も十全ではない。とはいえ、自治体Xでの民主的統制の機能不全を指摘しても、住民xがY又はZに対して何の民主的統制手段も持たないことが解消されるわけではない。

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