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2023.07.10 まちづくり・地域づくり

第5回 「音楽」を活用したまちづくりの成功要因②文化芸術を媒介として地域課題に楽しく取り組む「共奏」のまちづくりへのヒント

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「共奏モデル」実践のための方法論の提案

(1)地域課題解決を目的とした文化まちづくりに必要なプロセス
 筆者が調査した音楽のまちづくりの好事例に共通する事柄から、まちづくりへ文化芸術を導入する際に必要なプロセスを四つの段階に整理した。
① 問題の共有
 まずもって、どのような地域課題に取り組むのかという問題の共有が必要である。「音楽の力でまちを元気に」というような広すぎる目標では、どんなことを解決したいのかが明確でない。どんな課題があり、文化芸術の投入によって地域がどのように変化することを期待するのかを、関係者が共有できなければならない。
② 正当化
 どのような文化芸術分野をこの課題解決に投入するのかについて、特に自治体の政策として行われる場合、これを正当化するステップをおろそかにすることはできない。
 文化活動は人それぞれの自主自律的な分野であり、特定の分野に重点を置いた関与は行政の平等原則に反するという考えがあるからである。多くの場合、その理由にしやすいのは地域との関係性である。もともとある文化資源の活用や、地域にゆかりのある人材を登用することは正当化しやすい。また、平等原則を超えても大きな行政的効果がもたらされることが期待できる場合は、それを説明できることが必要である。
③ 動員
 新たに文化事業を立ち上げるために、必要な人やモノが動員されなければならない。音楽事業であれば場所や楽器といったハード面の整備も必要であるし、事業を遂行するための専門知識を持った人も動員されなければならない。地域内にないものは地域外からの調達も必要である。特にどういった人を動員するかと考える際に、音楽だから音楽に関係した人材をと考えるだけでなく、①、②のステップができていれば様々な人材が関与することが可能であり、その多様性あるガバナンスが事業継続の力となる。
④ 資源化
 地域課題解決は継続的に取り組まねばならないことであり、文化事業が打上げ花火的なものにならないよう維持・持続させるためには、新たに投入された人や知識が地域に定着し地域資源となって自走することが望ましい。人材育成や、環境整備なども含めた設計が必要である。地域資源として定着すれば、そこを起点に新たな課題への対応や内発的な発展のアイデアが展開していくことが可能となり、豊かな地域文化を支える基盤となる。

(2)文化まちづくり実装のためのアイデア
 上記プロセスを踏まえた上で、文化芸術をまちづくりに活用するためのアイデアについて提案したい。
① 地域内インターナルコミュニケーション
 「問題の共有」を行うためには、行政と文化芸術セクター、そして市民も含め、様々な主体が地域の問題について共有する場が必要だと考える。行政内においても、課題認識は各課によって異なっており、それが「文化」と結びつくかどうかは意思決定者の文化的背景や人間関係など偶発性によるところも大きい。その偶発性を喚起するためには活発な情報交換の場が必要だと考える。行政組織内だけでなく、関係団体、市民も含めた自治体内のインターナルコミュニケーションの発想を取り入れることを提言したい。
 インターナルコミュニケーションは、主に企業広報における用語で、組織内広報や社内広報とも訳され、理念浸透や組織風土の醸成等のために行われる活動である。このような考え方を柔軟に取り入れることで、行政職員内や、あるいは市内を大きくインターナル(内)と捉えて地域で起こっている様々な課題をセクターを超えて共有し、自分事として捉えるようなコミュニケーションを図り、集合知や文化芸術の発想力によって地域を変えていくことができるのではないだろうか。
② 地域文化資源のネットワーク化
 文化施設や産業、また文化芸術関連のアクターと連携しやすくするためには、ネットワーク化が有効である。具体的には、ウェブサイトで人や場所、団体、イベント等を検索できるプラットフォームの作成や、文化芸術と地域課題に関心のある人たちへの勉強会や交流会などを通じたネットワークづくりである。
 これは正当化にも有効な手段である。地域課題に関心のあるアーティストを自治体が認識することができるとともに、例えばアーティスト等を起用する際に、なぜその人を起用しているのかという理由付けになるからである。
③ 持続しやすい小さな活動の創出
 大きなアートプロジェクトは構想から実現までのハードルが高く、一度限りのイベントやコンサートは、まちづくりの文脈においては貢献の期待は低い。予算も人も小さく始めやすく、継続可能な活動をプログラムしていくことが必要であると考える。市民が主体となって活動を支えることで、地縁などを通じて長期的には地域に資源化され、地域文化の中に埋め込まれていくことで地域アイデンティティとなっていくものと考える。

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