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2023.06.26 政策研究

第39回 協調性(その2):垂直的協調

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融合型の事務配分

 戦後日本の国・自治体関係は、融合型といわれることが多い。融合型とは、例えば、初等中等学教教育・道路管理などの同じ事務に関して、国・都道府県・市区町村が、それぞれに関わっており、国・都道府県・市区町村が全体として、初等中等学教教育行政や道路管理行政などを担当しているという状態である。もちろん、個々の事務事業については、最終的に、国・都道府県・市区町村のどこかが実行しなければならない。例えば、小中学校は市区町村が、高等学校は都道府県が設置・助成したりしている。もちろん、国立(国立大学法人附属)の初等中等学校もあるし、都道府県立中等学校などもある。しかし、定数標準や国庫負担金制度や教員免許制度など国は制度をつくり、都道府県が実行するものも多い。また、学習指導要領や教科書検定など、国が実行する仕事もある。また、国道・都道府県道・市区町村道と、道路管理者は整然と区分されている。さらに、国道であっても都道府県が管理している場合もある。また、様々な基準を国が示している。
 このように最終的な業務は、国・都道府県・市区町村のどこかに割り振られるのであるが、しかし、それぞれの業務は、他の層の行政による業務を抜きにしては、互いに成立しない相互依存関係にある。このような状態が、融合と呼ばれてきた。融合状態では、国・都道府県・市区町村が協調性を持って同一の業務を分業することが「正常」であるので、表面的には権力関係は見えにくい。国が自治体を上下・主従として統制しているのか、対等・協力が形成されたのかは、鑑別は容易ではない。ただ、しばしば、集権・融合体制として理解されてきた。
 ともあれ、垂直的協調の外見又は「正常」状態を、共同行政・共同事務などと呼ぶこともできる。つまり、国の事務と自治体の事務とを截然(せつぜん)と分割することは困難であり、国・自治体が同じ方角に向いて共同して対処しているという趣旨である。また、教育分野では、文部科学省─都道府県教育委員会─市区町村教育委員会を貫通する共同状態を「円筒型行政」などと呼ぶこともある。

共同事務論

 世紀転換期の第1次分権改革では、機関委任事務制度廃止に伴い、国の事務である機関委任事務を法定受託事務又は自治事務に振り分ける作業がなされた。これに対して、一部の内政関係省からは、国の事務に近い法定受託事務と自治体の事務の自治事務とに、截然と分類することは困難であり、国・自治体の両方の性質を持つ「共同事務」があるという主張がなされた(1)。しかし、地方分権推進委員会は、「共同事務」を認めると、結局、機関委任事務の多くは共同事務に衣替えするだけに終わると考え、この考えを認めなかった。そのため、法定受託事務と自治事務の二分法が維持された。
 しかし、機関委任事務は国の事務であったが、法定受託事務も自治事務も、自治体の事務とされた。国の事務に近い性質の法定受託事務が、自治体の事務であるということは、結局、国・自治体の双方の性質を持つ「共同事務」を実質的に許容したことになる。さらにいえば、自治体の事務が「共同事務」的であり得る以上、自治事務も「共同事務」的に理解されることになった。自治事務に対しても、法律が存在し、法律所管大臣が存在し、政省令・告示や、是正要求・是正指示、同意を要する協議・技術的助言などの関与が可能になったのである。
 結局、自治体の事務の線引きは、法的には、法定受託事務と自治事務の間にあるのではなく、法定受託事務・法定自治事務と非法定自治事務の間に存在する。財政的にいえば、国が国庫負担・補助又は潜在的に財源保障する事業と、そうでない任意事業の間に存在する。その意味で、融合型の事務配分は、分権改革後の21世紀においても、強固である。実質的に、自治体の行う多くの事務事業が、「共同事務」的な位置付けになっている。

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