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2023.06.26 議会運営

育児のため本会議に出席することが困難な議員が本会議を欠席したまま市長にオンラインで質問を行うことができるか/実務と理論

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3 地方議会の欠席事由について

 地方公共団体の議会は、会議規則を設けなければならないこととされており(法120条)、会議規則の規定事項には、議会の本会議に関する議事手続や委員会に関する議事手続、選挙、決定の手続が含まれると解されている。都道府県、市及び町村の会議規則については、全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会及び全国町村議会議長会が、それぞれ標準的な会議規則の例を作成している。
 そのうち、例えば標準都道府県議会会議規則では、欠席時の手続について、議員は、「公務、疾病、出産、育児、介護その他のやむを得ない事由」のため出席できないときは、その理由を付け、当日の開議時刻までに議長に届け出なければならないこととされており、標準市議会会議規則及び標準町村議会会議規則においても同様の規定が整備されている。なお、当該標準会議規則の規定については、女性を含めた多様な層の住民がより議会に参画しやすくなるための環境整備を図る等の観点から、令和3年に改正され、「育児・介護」等が欠席事由として明文化されたところである。

4 設問の検討

 前述のとおり、法113条における本会議の「出席」は、現に議場にいることと解されており、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、会議を開くことができないとされていることから、設問の前提として、議場に出席している議員数が定足数を満たし、会議を開いている必要がある。
 そして、設問のように、育児を理由として物理的に議場にいることができない場合には、本会議では、「欠席」として取り扱われることとなる。また、その際には、議長への届出など、それぞれの議会の会議規則等に定められた手続をとることが必要である。
その上で、上記のような育児を理由として本会議に「欠席」している議員が、本会議での審議にオンラインによる方法でどこまで「参加」することができるかについて、以下検討する。
(1)議案に対する「質問」
 法116条1項において、本会議における議事は「出席議員の過半数」で決することとされており、出席議員は採決の際、現に議場にある議員と解されていることから、表決は議員が議場において行わなければならない。
 このため、表決に対する賛否の意見の開陳として行われる討論や、表決・討論の前提として議題となっている事件の内容を明確にするために行われる質疑など、表決と一体不可分の議事として行われる討論や質疑については、議員が議場において行わなければならないと考えられる。したがって、育児を理由として本会議を欠席している議員が、これらに該当する質問をオンラインによる方法で市長に対して行うことはできないと考えられる。
(2)地方公共団体の事務全般に対する「質問」
 他方で、(1)の質問に該当せず、団体の事務全般について執行機関の見解をただす趣旨での「質問」として行われる発言(いわゆる「一般質問」)については、その形式や手続に関する法律上の定めはない。
 また、このような「質問」は、各地方公共団体の会議規則等に定められた手続に基づき行われるものであるところ、会議規則等で定めるところにより、議場外において団体の事務全般について質問を行う文書質問を制度化し、そのような「質問」を議場外で行うことを可能としている団体も存在しているところである。
 以上のことから、地方公共団体において、条例や会議規則、要綱等の根拠規定の整備や、議決、申合せ等の所要の手続が講じられていれば、育児を理由として本会議を欠席している議員が、このような「質問」をオンラインによる方法で市長に対して行うことは可能と考えられる。

5 おわりに

 以上、地方議会の定足数、表決及び欠席事由について概説を付した上で、設問について検討を行った。本問における検討が、各地方公共団体の担当部局における適切な事務遂行の一助となれば幸いである。

(※本記事は「自治実務セミナー」(第一法規)2023年6月号より転載したものです)

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