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2023.05.25 政策研究

第38回 協調性(その1):統制・協調・対立・一致

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対立関係から一致へ

 AとBとの選好や指向の違いが明らかになった後に、AとBとが一致という現象に至ったとしても、AとBとの間は、協調関係なのか統制関係なのかは、外見的には識別は容易ではない。なぜならば、Aによって最終的にはBは統制されたのかもしれない。その逆かもしれない。AによるBに対する統制は、Bの独自の意思形成自体を阻害するほどには強力ではないとしても、最終的にはBはAに服従することはあり得る。外見的に統制が観察可能なのは、このように、初期においては不完全な統制のときだけである。最初から完全な統制の下では、統制は観察不能である。
 とはいえ、AとBの方針の違いが表面化した後に、最終的にAとBが一致したからといって、統制関係とは限らない。むしろ、AとBとの協調関係を観察しただけかもしれないのである。
 もちろん、統制か協調かの弁別は、外見的に観察できるともいえるかもしれない。例えば、当初、Aが100を主張し、Bが?100を主張していたときに、最終的な両者の一致が(Aの当初主張である)100であれば、AがBを統制したように見える(1)。逆に、両者の一致が±0であれば、両者は対等に歩み寄って協調したように見える。いわゆる「足して二で割る」という算術的妥協又は互譲である。結論としての一致が、どの程度当初のA、Bに近いか遠いかによって、A、B間の権力・影響力関係が観察可能な形で可視化されたともいえる。例えば、両者の合意が20であれば、Aに近い形でBが納得したわけで、AがBに対してある程度の統制を達成したということもできえよう。
 もっとも、交渉による理性的説得の結果として、100に落ち着いたのであれば、AはBを力ずくで統制したとはいえないかもしれない。合理的な主張と非合理的な主張を「足して二で割る」よりは、合理的なAの主張がBを説得(論破)した方がA、B全体を通じて両者にとってよいことであるし、それは統制ではなく対等な議論の結果による一致と見ることもできる。もっとも、説得的ではない主張をすること自体が、説得力=影響力のなさを表しているのであって、AがBを説得(論破)した以上、AがBを統制することのできる権力資源(説得力)を有していたことになると見ることが自然である。
 ただし、こうした初期のA、Bの主張から、終期としての一致の遠近によって、協調か統制かを識別するためには、初期の主張自体がゆがめられていない必要がある。Aの立場が100であるときに、Bはあらかじめ過大に?200を主張するかもしれないし、逆に、Aの影響力を想定してあらかじめささやかに±0を主張するかもしれない。当初から統制関係が作用していれば、Bが±0を主張し、Aの当初主張と「足して二で割る」形で、50で両者が一致したとする。この場合には、A、Bの痛み分けの妥協であって、A、B間の協調関係が表面的には成立しているといえるかもしれないが、あくまで、Aによる統制関係を背景とした意見の一致かもしれない。

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