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2023.05.12 まちづくり・地域づくり

第3回 持続発展可能なまちづくりを実現する「活動人口」②~自分たちのまちは、自分たちでつくる~

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2 持続発展可能なまちづくりにおけるフレームワーク~「活動人口」創出4STEP~

 最後に、これら抽象的な概念を具体的な施策にするためのフレームワークを紹介する。それが、持続発展可能なまちづくりにおけるフレームワーク「活動人口」創出4STEPである。
 このフレームワークは、施策レベルのものとしている。具体的な実施事業は各地域の資源や地域の実情によって変わってくると考えるからである。このフレームワークをもとに、各地方自治体において、まさに、行政、議会、企業、住民、まちに関わるアクター間で議論し、その地域に合った方法を見つけ出してくれることを願っている。
 社会の変遷の中で「有形物」から「無形物」に、「物質的豊かさ」から「非物質的豊かさ」に価値観が流動化している。これからは、人を「量」で見てきた時代から、人を「質」として捉え、人が持つスキルや知見などの無形資産を生かして新たな価値を生んでいくことが持続発展可能なまちづくりへのヒントとなるだろう。
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筆者作成

図3 「活動人口」創出4STEP


(1)STEP1:「量」から「質」へのまちづくり
【量から質への長期的な戦略構築】
1 STEP1:「量」から「質」へのまちづくりでは、量から質への長期的な戦略構築を提案する。人を労働力や税収を生み出すための資源としてのみ捉えるのではなく、価値を共創するアクターであり、まちに価値を生み出す資本であるという考え方に変えていくべきである。この意識改革は困難であり、大きな舵(かじ)取りが必要である。
 まちづくりにおいて、一定数の人口維持は必要である。過疎地域において、唯一の小学校、中学校がなくなるという事態は、そのまちの持続性が危ぶまれてしまう。しかしながら、調査自治体においても、同様例の神山町、徳島県上勝町、島根県海士町においては、域外からのスキルや知見の獲得に成功している。これは短期的な量的施策ではなく、長期的な質的施策への転換でもある。長期的なビジョンを描き、それをまちの経営計画として掲出している。
 特に、神山町の神山町創生戦略・人口ビジョンの「まちを将来世代につなぐプロジェクト」の計画書は、一貫してやわらかな言葉で分かりやすく表現されている。「血が通っている」という表現が正しいか分からないが、これほど具体的で、生きた言葉で書かれた行政計画書は珍しいのではないか。
 計画書は、生きた計画にならなければ絵に描いた餅である。職員一人ひとり、そして組織のマインドセットが必要である。まちづくりのアクターとなる職員の役割は大きい。職員が自分ごと化し、まちづくりに積極的になることは重要である。また価値共創のアクターとなる住民や企業との窓口となる存在でもある。部署異動によりスキルや知見が蓄えられないことや、ステークホルダーとの関係性が途切れてしまうことは、双方にとってよくない。
 また、地方自治体の人事管理においては、職員を単なる労働力として見るのではなく、その職員が持つスキルや知見をまちの資源として捉え、育成していく必要がある。これは、職員だけでなく、住民のスキルや知見もまちの資源として捉え、育成する場を用意する必要がある。繰り返しになるが、この「量」から「質」へのマインドセットが持続発展可能なまちづくりの根幹となる。

(2)STEP2:人的資本を呼び込むまちづくり
【活動の可視化や土壌づくり】

2 STEP2:人的資本を呼び込むまちづくりでは、活動の可視化や土壌づくりを提案する。まちに人的資本を呼び込むためには、「多様性」、「寛容性」が必要となる。まちに寛容性があると多様な人材が集まり、その多様性がまた新たな人材を呼び込むだろう。また、自己実現できるまちには活動的な人が集まる。
 ここで提案したいのが、「見える化」によってまちづくりを可視化することである。まちづくりは、目に見えないものであり、触知不可能性(intangibles)を含んでいる。よって、まちづくりの様子を可視化(見える化:visualization)することによって、まちの息遣いや躍動を地域内外の人たちに共有・発信することが大事である。
 「母になるなら、流山市。」というコピーを出し、地方創生のトップランナーともいえる流山市では、分かりやすいコピーでまちのビジョンを掲げ、まちのビジョンを可視化し、外部資本の呼び込みに成功している。併せて、地域の活動団体に光を当てて、積極的にメディア露出させるなど、住民の一人ひとりの活動に光を当て、自己実現の支援を行っていることにも着目すべきであろう。現在は住民が自己実現できるまちを目指し、インナーブランディングに力を入れている。ビジョンや活動の可視化によって、外部資本を呼び込み内発的発展を遂げている好事例である。
 このような土壌づくりには長い年月がかかる。神山町では、今春、民間企業による私立の高専が開校したが、これも一朝一夕になった話ではない。「(活動は)30年以上続いている」というように、これまでのまちづくりの活動が地域内外の関係性を紡ぎ、土壌が築かれてきた。土壌づくりには長期的な施策の視点が必要だろう。これには条例化や上位計画での可視化と長期的担保も効果的である。

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