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2023.04.10 まちづくり・地域づくり

第2回 持続発展可能なまちづくりを実現する「活動人口」①~人口減少時代に注目すべき「活動人口」とその好事例~

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2 人口減少時代に注目すべき「活動人口」とは

 地方創生における人口分類は大きく「定住人口」、「交流人口」、「関係人口」の三つがある。最も分かりやすい分類が、その地域に住まう人々「定住人口」である。そして、その地域に観光、通勤・通学、ショッピング、レジャーなどで訪れる人が「交流人口」である。さらに、長期的な定住人口でも短期的な交流人口でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人を「関係人口」と呼ぶ。この「関係人口」は、地域づくりの担い手となることが期待されている。さらには、地域の担い手として活躍することにとどまらず、地域住民との交流がイノベーションや新たな価値を生み、内発的発展につながるほか、将来的な移住者の増加にもつながることが期待されるとして、地域づくりの担い手にとどまらず新たな価値創出の資源としても期待されている。
 しかし、これまでの関係人口の関わり方は移住定住人口への通過点的な考え方や、迎え入れられる客体としての関係人口と消費される地域という一過性の関係となっており、地域再生の主体にはなりえなかった。
 これは、関係人口である外部の人材が主体的になれなかったことだけが問題ではなく、迎え入れる地域住民が「外から来た人が何かしてくれるのではないか」という受け身になっていたことも問題の一つにある。
 国土交通省(2019)は、地域の主体性を前提としつつも、外部アクターとの連携を強調する「新しい内発的発展論」を示しており、これらの定住人口及び関係人口に内在し、「経済活動とは異なる価値基準を含め何らかの形で、地域の社会・経済活動に継続的に関わる者」を「活動人口」と定義している。
 また、牧瀬(2022)は、関係人口を良い関係人口と悪い関係人口に大きく分け、シビックプライドを醸成することにより、良い関係人口を創出していくことにつながるとし、この良い関係人口を「活動人口」と称して、「地域に対する誇りや自負心を持ち、地域づくりにいきいきと活動する者」と定義している。
 関係人口は、その地域に関わるという表層的なものから、当事者意識に基づく自負心を抱き活動する主体に深化することで、関係人口に期待される役割を果たすことができるのである。
 この関係人口を大都市から地方への一方的な人の流れで終わらせてはいけない。外部から呼び込んだ人の流れと、従来からそこに住まう人々との間の価値共創によって、関係人口は地域とのつながりを深めていき、住民は地域に対する誇りや自負心を持つ。これらのプロセスを経て、まちづくりに貢献する「活動人口」を創出していくことが、持続発展可能なまちづくりにとって大切なのである。
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出典:筆者作成

図1 地方創生の取組関係人口との価値共創による「活動人口」の創出

 この活動人口の創出に必要な要素の一つに、「価値共創」がある。共創という言葉は、近年多くの自治体で使われるようになってきた。「共創」という言葉は、2000年代後半から多く使われるようになり、1980年代後半から数多くの自治体で使われてきた「協働」という概念に取って代わっていくと考えられる。
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出典:全国47都道府県議会議事録横断検索をもとに筆者作成

図2 まちづくりにおける「共創」と「協働」の使用について

 この価値共創という言葉は、サービス研究の分野がもとであり、2004年に米ミシガン大学ビジネススクール教授のC. K. PrahaladとV. Ramaswamyが提起した概念である。
 従来の考えである企業は生産、消費者は消費という価値創造プロセスから脱却し、生産者と消費者との価値の「共創」という従来にない発想こそが必要だとし、消費者を単に商品を消費する存在としてではなく、価値創造プロセスのパートナーとして、商品開発やサービス、新しいアイデアの創出などに一緒に取り組むこととした。
 このことは、ビジネスの話だけでなく、自治体のまちづくりにもいえることである。これまでは、主体は行政、客体は住民として、行政は住民に対し、いかに効率的に質の高い公共サービスを提供するか、という考え方に至っていた。この考えを改め、住民は、ともにまちをつくっていくアクターであり共創相手なのであるという思考の変化が必要なのである。
 筆者は、各地域において、“自分たちのまちは、自分たちでつくる”という活動的な人々が増えることが、持続発展可能なまちづくりに寄与すると考えている。住民が主体的になり、自身のスキルや知見をまちづくりに生かすことで、まちに新たな価値が創出される。前述のサービス研究分野の先行研究を踏まえ、筆者は、活動人口を「地域に対する誇りや自負心を持ち、自身のスキルや知見をまちに還元するまちづくりの主体となる人々」と定義する。次節では、この活動人口に関連した好事例を紹介する。

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