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2023.03.27 政策研究

第36回 競争性(その5):水平的競争と垂直的統制

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 戦後日本の地方自治の1970?80年代の実態について、村松岐夫は、水平的政治競争と垂直的行政統制のモデルを打ち出して、両者を対置させた(1)。しかし、佐藤誠三郎は、村松モデルに対して、水平的政治競争は垂直的行政統制と両立する可能性があることを指摘した。村松は、水平的政治競争のエネルギーが、下から上へ噴出してむしろ、垂直的行政統制を機能させなくさせる可能性を指摘した。おそらく、この点は、村松の政官関係論における政党優位説での補強が必要であろう。
 つまり、自治体間の水平的政治競争は、政権与党の政治家を通じて国政に吸い上げられ、その影響力が各省庁官僚に及ぶため、各省官僚の垂直的行政統制が機能しなくなる。いわゆる政党優位(「党高政低」)である。しかも、1970?80年代当時の与党は族議員を中心として、各省別に分立しており、内閣・政権として一枚岩の政治主導は存在しない。首相や内閣は、与党幹部や与党政調会に、指導性を発揮できない。したがって、自治体間の水平的政治競争は、国政与党による垂直的政治統制(群)をもたらす。しかし、垂直的政治統制のあり方は多元的であり、国レベルの政権与党内では水平的政治競争が発生する。それゆえ、垂直的政治統制の自治体への影響力は、全体としては集権的ではありながら、ある程度は緩和される。こうして、集権の中でも自治の領域が確保される相互依存モデルが成立する。
 もっとも、2000年代以降、国政での政治改革の結果として、内閣・首相の指導力の高まった官邸主導が成立すると、国レベルの水平的政治競争は減退する。この場合には、端的に、垂直的官邸統制が発生する。国レベルの各省間の水平的行政競争や、政策分野間の水平的政治競争は、首相官邸の政治統制又は官邸官僚による行政統制を強化するものでしかない。国レベルの与(癒)野党での政治家同士の水平的政治競争も同様である。結果として、国レベルでは官邸主導が形成され、自治体に対しては、一枚岩の垂直的官邸統制として現れる。こうして、21世紀第1四半期には、水平的政治競争と垂直的官邸統制とがセットになる。


(1) 村松岐夫『地方自治』(東京大学出版会、1988年)

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