2023.03.10 政策研究
第15回 政策(議会基本条例)と議会・議員(下)
議会の力量を高めるための議員定数や議員報酬を考える
ところで、議員定数では、自治体政府が幅広い分野の政策を担うことから複数の常任委員会に分業して深く議論すること、極力多様な議員により様々な議論を前提とすること、さらに委員長はファシリテーターの役目を持つことから、小さな自治体議会に求められる議員数は、最低14人(二つの常任委員会×7人)の確保が期待される(なお、江藤は7、8人を常任委員会の定数基準としている(江藤 2022:37))。もちろん、渡辺がいうように、市民福祉の向上につながるかどうかの議員定数改正でなければならない。したがって、本来、議員定数「減」の議論だけでなく、「増」の議論もありうる(渡辺 2018a:1)。
議員報酬は議長・副議長・委員長等の役職者を除き同一である。議会報酬であれば、報酬は同一とすることはやむをえない。しかし、このことは多様な人が議員になることを前提とすれば、問題を引き起こす。例えば、議員が「子育て時期」にあり他の収入がない場合と、定年後で他の収入のある場合とでは、両者の収入には大きな差が生ずるからである。このことは、議員の「なり手不足」につながっている。このような現状のもと、全国町村議会議長会の委託研究事業である「議員報酬・政務活動費の充実に向けた論点と手続き~住民福祉の向上を実現する町村議会のための条件整備~」において、江藤は住⺠⾃治を進める提言として、「提言1:議会・議員活動を⽰して議員報酬を住⺠と考えよう!」、「提言2:政務活動費は監視・政策提言力を高める重要な条件であることを認識しよう!」の二つを挙げている(江藤 2022:2)。そして、議員報酬と政務活動費の考え方を示している(江藤 2022:12-48)。各議会にとっては参考となろう。なお、議員報酬と政務活動費については、毎年見直しをすることが求められよう。
そして、議員定数や議員報酬についても、神原がいうように本物の議論をする土俵づくりが急務ではないか。すでに先例があるように、市民と専門家による議会改革の諮問会議を常設して、その自由で闊達(かったつ)な議論の広がりの中で、そのあり方も考えるべきであるといえよう(神原 2019:301)。なお、市民と専門家の中には、ジャーナリストも含まれよう。
ロールモデルに学ぶ、ロールモデルになる、ロールモデルの連鎖、優れた議会はロールモデルを生み出す
次に、「議員のロールモデル(考え方や行動が他の議員の規範となる人物)」について考えてみよう。議員のロールモデルをつくり、連鎖を続けることは常に求められる。特に、自治体議員のなり手不足、多様な働き方の模索、価値観の広がりという背景がある中で、議員のロールモデルの新たな型が生み出されることへの期待が高まっている。
現職議員ないし議員候補予定者の中には、議員としての活動とそれ以外の活動の両立方法や、議員としてのキャリアの構築方法が分からないという者もいるであろう。そのような状況を解決するためには、現職議員ないし議員OB・OGがロールモデルとして存在し後輩を導くことが期待される。
では、ロールモデルにふさわしい議員はどのような人物であろうか。自分の所属する議会(議員候補予定者の場合には、住所のある地域の議会)にロールモデルとなる人物を見つけられるとよい。しかし、そのような議員がいない場合には、他議会の議員をロールモデルとすることも考えられる。なお、議員のロールモデルは、議員として手本となる人物であるが、議員のスキルのみならず、人としての行動や考え方も他の手本であることが望ましい。
ところで、ロールモデルを設定する場合には、ロールモデルを1人に絞り込むことは難しい。したがって、複数人のロールモデルを意識することが必要であろう。例えば、「議会運営についてはAさん」、「政策内容αについてはBさん」、「政策内容βについてはCさん」、「議会報告会はDさん」、「一般質問はEさん」、「ネットワークのつくり方や行政等との連携はFさん」、「モチベーションの高め方はGさん」のように、ロールモデルを設定することも考えられる。
そして、ロールモデルに学んだ議員が、ロールモデルになり、ロールモデルの連鎖につながる。優れた議会はロールモデルを生み出す(図2参照)。
出典:筆者作成
図2 ロールモデルの連鎖
また、ロールモデルがあると、自分との比較ができ、目標設定もしやすくなる。結果的に成長スピードの向上も期待できよう。さらに、コミュニケーションの活性化が図られる。ロールモデルになる議員と接近するためには、その議員が今まで何を見て学んできたかを観察することが重要となる。なぜなら、ロールモデルが何を考え議員活動をしているかを知ろうとする気持ちが、接点のきっかけをつくるからである。こうした動きが生まれることで、ロールモデルとの間のコミュニケーション活性化につながっていく。そのことは、やがて議会(全体)の活性化にもつながる。