地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2023.02.27 議会改革

第36回 これからの時代の自治体議会を展望する

LINEで送る

5 住民自治の体現者を目指して

 住民自治の担い手である自治体議会は、住民の多様な意見を反映し、議論を行うフォーラム(広場)として、住民とともに歩むことを目指す必要がある。
 そこでは、住民に見える形で、人々の様々な思いや利害を議員が代弁し、議論が展開されることが重要となるが、より直接に住民の意見を反映するための場や機会を設けることなども必要となる。その方法としては、参考人、公聴会、パブリックコメント、住民報告会の活用、住民発言制度の整備、政策サポーターや議会モニターの導入などが考えられるだろう。それらを通じ、利害が対立する問題の場合にはなお不満は残ることはあったとしても、結論が受け入れられる環境をつくっていくことが大事となる。それと同時に、議会の情報発信機関、あるいはアジェンダ設定機関としての機能の充実強化を図っていくことも必要である。
 このように、場や機能の開放性を高め、開かれた議会となってこそ、議論のフォーラムとなりうるといえる。
 ただし、住民参加は、自治体全体で推し進めていくべきものであり、議会の専売特許となるものではない。執行機関における住民参加の推進の動きに対し、議会の側はとかく不安や不満を抱きがちであるが、議会としてはさらに住民の意見を取り込むようにすることが重要となる。執行機関の側が多様で流動的な民意を十分に吸い上げられるわけではなく、また、民意というものは議論を通じて形成されていく面があるのであり、議会提出の段階では定まっていないことも多い。議会では、各議員を通じて執行機関がすくいきれなかった意見や不満も含め多様な意見が表出され、かつ、公開の場で住民の参加も得ながら議論が行われうるのであり、しかも最終的な決定権は議会がもつ。住民参加の面でも、議会と執行機関の両者がほどよい緊張関係をもちつつ、競合し、補完し合うことが必要であり、そのことが住民の納得感の醸成にもつながってくることになる。
 なお、議会と住民との関係や住民参加のあり方については、住民との実際上の距離との関係などから、基礎自治体と広域自治体、あるいは自治体の規模によっても異なりうるものであることも意識する必要がある。
 さて、議員は、選挙によって選ばれ、住民の代表として民主的正統性をもち、それによって構成される議会も自治体において最も強い民主的正統性を備えた機関である。ただ、選挙は、民主政治において最も重要な機会ではあるが、時間的には点であり、すべてを正当化付けるものではなく、選挙で選ばれれば後は代表としてどう振る舞ってもよいというわけではない。選挙で示された民意は大事であるが、それとともに、選挙後も、様々な機会や手段を通じて民意の反映や住民の参加に取り組んでいくことが重要である。自治体議会の議員は、常に民意を探り、住民の多様な意思や利害を議論の俎上(そじょう)に載せ、その調整を行う責務があると見るべきであり、議会全体として、いかに、住民に寄り添い、住民との距離を縮めていくかを模索していく必要がある。
 その点では、議員や議会を特別の存在として取り立てて強調するようなことは避けるべきだろう。議員を特別視することは、住民との間に垣根や距離をつくることにもなりかねない。もちろん、住民の代表であることや議員としての使命を自覚することは大事であり、また、選挙を意識して支持者に媚(こ)びへつらうというのは問題である。しかし、その地位や権力は住民からの負託によるものであるにもかかわらず、その権力や特権意識を振りかざすことは、奢(おご)りやトラブルをもたらし、議会に対する不信や関心の低下にもつながりかねない。そのような意識・自覚はあまりないのかもしれないが、議員も権力者なのであり、そうである以上は、相応の緊張感、献身的姿勢、謙虚さも必要となるといえる。人々の政治意識にも問題はあるが、議員や議会が特別のものである限り、せめて身近な地域社会において、集合行為問題の解決を担う「政治」がすっかり忌み嫌われる言葉(ダーティワード)に成り下がっている状況(12)から少しでも抜け出すようなことさえも、難しくすることになるのではないだろうか。
 これらのことは、自治体議会の現場でもしばしば語られてきているものではあるが、「言うは易く行うは難し」となっているのが現実のようである。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る