2023.02.27 議会改革
第36回 これからの時代の自治体議会を展望する
3 自治体議会の多様性
自治体議会については、地方自治法の定め、標準会議規則等の存在、横並び意識などが相まって、必要以上に画一的なものとなっている面がある。しかし、自治体議会は、もっと個性的で、多様であってよいはずであり、これからは、それぞれの自治体議会の独自性も問われることになってくるだろう。地方自治法の規定はあるが、近年その規律は緩和されてきており、また、それぞれの創意工夫によって多様なものとしていくことは可能といえる。
もちろん、議会の運営・役割は基本的にはそう変わるものではなく、自治体の議事機関であることがベースとなる。ただ、その一方で、すべての自治体議会が同じように運用され、機能することが必要となるわけではない。特に、議会の強化が論じられる場合には、すべての自治体議会が専門性を高め政策機能を発揮するようにすべきといった議論に出くわすことが少なくなく、素人議会的な発想や夜間休日議会には反対の論陣を張る向きなどもある。しかし、それぞれの自治体や議会の状況に応じてどのような道を選ぶかは、それぞれの議会の選択の問題であって、一つの型を押し付けるような論じ方には疑問もある。
1,788の議会の中には、まずは必要最低限の機能を果たすことに重点を置く議会もあれば、積極的により幅広い機能を果たす議会もあり、あるいは同意や調査を通じたチェック・監視に重点を置く議会もあれば、議会での政策の形成・決定に重点を置く議会があってもよいはずである。自治行政の広範化・専門化などからすれば、自治体議会でも委員会が中心とならざるをえないとの見方もあるが、その規模との関係のほか、住民に見える場での討議(いわゆるアリーナ機能)に重点を置くか、議会における政策の修正・形成(いわゆる変換機能)に重点を置くかによっても、本会議中心と委員会中心のどちらにシフトするかが変わってくる。
それと、議員の定数や報酬の問題をどのように絡めていくのかも、様々なバリエーションがありえ、これも選択の問題といえる。職業をもった人などがそのまま議員となることを可能としたり、住民が傍聴しやすくしたりするために、会期日数等を工夫しつつ夜間休日議会を積極的に取り入れるのも、通年会期制の導入などにより通年議会化を図り、常設性や専門性を高めるのも、自治体の選択である。
一つのあるべき論を振りかざすのは勝手だが、それ以外の議論や試みの余地まで否定する必要はないはずであり、押し付けや邪魔をするような論調は論外である。他方、既得権益や有利不利、横並びにこだわり、思考停止や時間稼ぎの先延ばし、後ろ向きの議論となるようなことも、現在の自治体議会の状況に鑑みれば妥当とは言い難い。
議会の強化は、戦後民主主義の課題の一つとされ続けてきた。確かに、これまで、自治体議会が、その機能を十分に果たしてきたとは言い難い。ただ、そこで一貫して掲げられてきた議会像というのは、議会主義(議会中心主義)の理想にこだわるものであったのであり、それが現代においても妥当するものであるとは限らない。地方自治をめぐっては、その間に、中央集権と地方分権の間で揺れ動いてきたのであり、また、国家の役割の拡大や行政国家現象の進行に伴い、自治の行政化が進む一方で、近年は行政の民間化など公私協働も進められてきている。必要なのは、自治体の状況に応じ、それらにも対応した等身大の自治体議会のあり方の模索であり、その姿は、一つではありえず、かつ、状況に応じて変わりうるのである。