2023.02.27 議会改革
第36回 これからの時代の自治体議会を展望する
最近、議会での差別的発言と議員としての職務執行の外形を備えたSNS上の投稿発言に対する市の国家賠償責任が裁判所により認容された事例(2)、議員によるインターネット上でのプライバシーの侵害や、誹謗(ひぼう)中傷・差別表現への賛同表明等が問題となった事例など、議員の言動が問題となる事例が目につく。後者の三重県の事例では、議員による人権侵害行為のほか、人権侵害行為の扇動、差別的投稿に対する「いいね」といった「第三者の行った侵害行為に対する賛成の意見の表明」などの人権侵害行為の助長行為を禁止する政治倫理条例の改正が行われている。
ところで、本連載の終わりが近づきつつある2022年末となって、議員のなり手不足や多様性をめぐり制度改正の動きが具体化することになった。
一つは、同年12月に成立した地方自治法改正であり、議員による請負に関する規制について、「請負」の定義の明確化を図るとともに(3)、各会計年度において支払を受ける請負の対価の総額が議会の適正な運営確保のための環境整備を図る観点から政令で定める額を超えない場合には、規制の対象から除外するほか、法律の附則で、政府の措置等として、事業主に対し、自治体議会の議員の選挙においてその雇用する労働者が容易に立候補できるよう、立候補休暇等に関する事項を就業規則に定めることその他の自主的な取組みを促すことなど(4)が規定された。
もう一つは、第33次地方制度調査会の「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会の実現に向けた対応方策に関する答申」(以下「33次地制調答申」という)である。これを受け、議会の設置根拠規定に議事機関として住民が選挙した議員をもって組織されるという議会の位置付けの追記、自治体の所定の重要な意思決定に関する事件の議決等の議会の役割・責任の明示、議員の心構えとして議会の権限の適切な行使に資するため住民の負託を受け誠実に職務を行うべき旨の規定などの地方自治法の改正が行われる予定だが、いずれも抽象的であり、また、答申内容は課題の提起や、議会の取組み、制度的検討の必要性などを述べるにとどまるものが少なくない。
一歩前進とはいえ、問題状況に照らせば微温なものといわざるをえず、むしろ諸々の事情による改革の難しさを浮き彫りにすることになった感が強い。とりわけ、こと選挙制度となると、利害が複雑に絡むことになり、政治の側の動きも鈍く、一向に改善される気配は見られない。もちろん、制度改革だけで対応できる問題ではなく、また、選挙の現実はそう甘くはない。しかし、制度的・社会的に選挙のハードルを上げ、多様な人材が流入することを妨げてきた面があることも確かであり、それは既得権益の保護にもつながってきた。やはり、制度・環境の見直し整備や工夫は不可避であり、議員のなり手不足を本当に危惧するのであれば、自治体議会の側としても、もっと大きな声を上げ、総論だけでなく各論にも踏み込んでいくべきではないだろうか。それとともに、政党の側も、この問題にどのように取り組むのか態度を明らかにし、責任をもった対応をすべきではないだろうか。その本気度が問われている。