2023.02.27 議会改革
第36回 これからの時代の自治体議会を展望する
2 議員と多様性
これからの自治体議会を考える上で、「多様性」が一つのキーワードとなることは間違いないだろう。本連載でも、2回にわたり「自治体議会と多様性」について取り上げた。
議会については、性別、年齢、職業・経歴などが大きく偏ることなく、できる限り多様な議員によって構成されるようにしていくことが必要である。この点、同質性の高い方が、議論や意思決定がスムーズになされ、議会の機能を高めることになるとの反論もありうるのかもしれない。しかしながら、社会が複雑化し、利害が錯綜(さくそう)し、その対立が激化する現代社会においては、議論による妥協・調整の基盤となる同質性はむしろ失われつつあるのであり、現代議会では、多様な視点が持ち込まれること、様々な意見・利害が表出されること、素直な疑問、健全な批判等が確保されるようにすることなどが重要である。
そして、それとともに求められるのが、議会における透明性・開放性と寛容性・包摂性である。これまで、自治体議会については、その閉鎖性や排他的な傾向が指摘されることが少なくなく、それが少数者や異質なものへの攻撃や排除としてしばしば問題化してきている。
しかし、多数派によるそのような振る舞いは、議会の権威や信頼を低下させ、自らの首を絞めることにもなりかねないものといえる。気に食わない発言や批判をしたり、慣例や合意に従わなかったり、問題を住民の前に明らかにしたからといって、数の力でそれを抑え込み、あるいは排除しようとするのは、政治としてあまりにも狭隘(きょうあい)であり、言論のフォーラムを標榜(ひょうぼう)するのであれば、開放的・寛容的な場であることを示すようにすべきだろう。そこでは、少数者や特別の配慮を必要とする者にもできるだけ発言や参加の機会が確保されるように努めるべきであり、そのためにも、立場の互換性というものが認識される必要がある。議会制民主主義においては、今日の多数派は明日の多数派とは限らないのである。
もちろん、少数派の側にも、基本的なルールを守り、正当性のある要求を心がけ、最終的に数で決まったことには従うようにすることが求められる。お互いにフェアプレーに徹し、激しいやり取り・応酬となったとしても、お互いに相手の立場を理解するようにし、終了後は後を引かないようにすることが大事である。
それは現実を知らない建前論にすぎないとの反論もありうるだろう。確かに、人はみな不完全な存在であり、愚かで弱い面をもち、だからこそ群れ、数や力に頼ることにもなる。ただ、議員に政治的道徳的に優れた聖人君子たれというつもりはないが、せめて議会の場では言論を重んじるstatespersonとしての意識をもって臨むように心がけるべきではないだろうか。またここで、議会が、代表機関として住民の範たるように振る舞うべきというつもりもない。しかしながら、議会での閉鎖的・不寛容・排他的な所業は、住民の信頼を揺るがすにとどまらず、地域社会にも何らかの影響を与えかねないことだけは自覚すべきだろう。社会において差別的・攻撃的・排他的な言動が横行し、不寛容な傾向が強まる中で、議会がそれを映し出すようなことがあってはならず、議員がそのような言動を行い、助長するようなことは、議会内ではもちろんのこと、議会外でも、許されるものではない。