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2023.02.27 議会改革

第36回 これからの時代の自治体議会を展望する

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7 おわりに

 2019年11月より、36回にわたり、自治体議会のあり方について探求を行ってきたが、今回をもって連載をひとまず終えることとしたい。長期間にわたりお付き合いをいただいた読者諸氏に心から御礼を申し上げたい。
 当初は、「─自治立法における議会・議員の役割を見据えて─」というサブタイトルを付し、自治体議会の制度やそのあり方を確認した上で、自治立法における議会の役割・あり方を論じて連載を終える予定であった。しかし、書き進むに従い、これまで必ずしも十分には論じられてこなかった「自治体議会」に対する筆者自身の関心(素材としてのおもしろさの認識・興味)が高まり、また、連載についてはそれなりに読者の好評を博したことなどもあって、結局、連載は当初の予定を大幅に超える回数となり、取り上げるテーマも多方面にわたることになった。このため、連載の途中からサブタイトルを外すことにもなった。
 本連載では、自治体議会の意義・役割・あり方について、単なる解説にとどまるのではなく、現実にも目を配りつつ、常に制度だけでなく、その基本に立ち返り、理念的・多角的・総合的に論じたところであり、そこでは、法という視点も意識し、関係裁判例も多数取り上げてきた。ときに厳しい批判や耳の痛い指摘をすることもあったかもしれないが、それは、それぞれの議会が、問題や課題に正面から向き合い、また、時流に流されることなく、自分の足元をよく見つめて、そのあり方を考えていくことの必要性を確認するものであった。どこまで、参考となりうるようなあり方を示せたかはともかく、以上の点では、これまでの自治体議会に関する論考とは異なる切り口もいくばくか示せたのではないかとも考えている。
 本連載が、地域の民主政治のために日々奔走・奮闘しておられる自治体議会関係者の方々にとっていささかなりともお役に立つことができたのであれば、幸甚である。

(1) 『曙光』(1880~1881年)ニーチェ全集7(茅野良男訳、筑摩書房、1993年)462頁。
(2) 鎌倉市議会議員差別発言事件・横浜地判令和3年12月24日D1-law判例体系 判例ID28300145。市が控訴せず確定。
(3) 地方自治法92条の2の「請負」について、「業として行う工事の完成若しくは作業その他の役務の給付又は物件の納入その他の取引で当該普通地方公共団体が対価の支払をすべきもの」と定義している。
(4) さらに、立候補休暇等に関する法制度について、事業主の負担に配慮しつつ、かつ、他の公職の選挙における労働者の立候補に伴う休暇等に関する制度のあり方についての検討の状況も踏まえ、自主的な取組みの状況等も勘案して、引き続き検討が加えられることを求める検討条項も規定されている。
(5) 政府の2020年の「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」において、目指すべきデジタル社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」が打ち出され、また、2020年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」においても、ビジョンとして改めて位置付けられている。そして、このビジョンの実現のためには、住民に身近な行政を担う自治体の役割が重要になるとされているところである。
(6) 自治体におけるDXの推進をめぐっては、2020年に、政府の「デジタル・ガバメント実行計画」に掲げられた自治体関連の各施策について、自治体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化し、国による支援策等をとりまとめた「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」が策定され、その後、2022年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」や「デジタル田園都市国家構想基本方針」なども踏まえ、同年9月に、「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】」として改定が行われている。
(7) 地域においてアイデアや手法を展開して、地域の課題を解決するためには、各自治体のデータが全国的につながることなどが必要となるとともに、国・自治体・事業者が保有する官民データが、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用できるように公開する「オープンデータ化」も求められてきており、自治体議会もこれらに対応していくことが必要となる。
(8) Evidence-Based Policy Makingの略であり、統計や業務データなどの客観的な証拠に基づく政策立案を意味するものとされる。
(9) 総務省の資料「地方議会における委員会のオンライン開催の状況」によれば、2022年1月現在で、135の自治体(全自治体の7.6%で、内訳は都道府県13、指定都市6、市区71、町村45)で委員会条例や会議規則の改正が行われ、185の自治体が改正予定とのことであった。実際にオンライン委員会を開催したのは35議会(都道府県3、指定都市2、市区18、町村12)であり、その形態は、一部の委員のオンライン出席が27議会、委員はオンライン出席・委員長は議場での出席が4議会、委員長及び委員全員のオンライン出席が11議会となっている。このほか、オンラインでの委員会を試行した議会が29との数字もある。
(10) その内容は、①憲法56条1項の「出席」は、原則的には物理的な出席と解するべきではあるが、国の唯一の立法機関であり、かつ、全国民を代表する国権の最高機関としての機能を維持するため、いわゆる緊急事態が発生した場合等においてどうしても本会議の開催が必要と認められるときは、その機能に着目して、例外的にいわゆる「オンラインによる出席」も含まれると解釈することができる、②その根拠については、憲法によって各議院に付与されている議院自律権を援用することができるとするものであった。
(11) 2023年2月7日付け総務省自治行政局行政課長「新型コロナウイルス感染症対策等に係る地方公共団体における議会の開催方法に関するQ&Aについて」。具体的には、本会議につき、議案に対する質疑・討論・表決と、自治体の事務全般について執行機関の見解をただす趣旨で行われる質問(一般質問)の二つに分け、前者については、本会議において団体意思を最終的に確定させる上で議員本人による自由な意思表明は疑義の生じる余地のない形で行われる必要があることから、表決や、表決と一体不可分の議事として行われる討論や質疑は、議員が出席して議場で行う必要があるとする一方、後者については、形式についても法律の定めがないことから、各自治体の会議規則などで定めるところにより、欠席議員がオンラインで質問を行うことも可能とするものである。
(12) コリン・ヘイ『政治はなぜ嫌われるのか』(吉田徹訳、岩波書店、2012年)。
(13) 議会による取組みとしては、例えば、北海道の福島町議会では、議会特別委員会での1年間の議会活動に対する議会評価のほか、1年間の議員個人の活動について議員本人が評価項目を踏まえ「ほぼ満足○」、「努力が必要△」、「さらに努力が必要▲」による議員評価を行い、その結果をホームページ上で公開してきており、また、北海道鷹栖町議会では、一般質問に関する傍聴者への配布資料に、5段階評価の一般質問の通信簿欄も設け、傍聴者は、①テーマの設定、②聞き取りやすさ、③説得力、④追及力、⑤共感度の五つの観点から議員の一般質問の評価を行い、回収した通信簿はレーダーチャートにし、自由記述の意見もピックアップして議会報に掲載する取組みを行っている。
(14) ボートマッチは、有権者が政見等に関する質問に回答することにより候補者との考え方(あらかじめ政策等に関する質問項目を設定し、候補者が回答)の一致度などが表示されるインターネットサービスであり、東京都杉並区が2023年4月の区議会議員選挙で、区政への関心を高め、投票率のアップにつなげようと、ボートマッチの専用サイトを開設する準備を進めていたところ、総務省は、2023年2月14日付けの事務連絡で、選挙管理委員会による啓発・周知活動の範囲を超え、候補者の平等公平な取扱いの担保が困難なゆえに選挙運動に該当し特定公務員の選挙運動禁止に抵触するおそれなどの問題があるとの見解を示した。ちなみに、選挙運動に該当する場合でも、ウェブサイト等を利用した選挙運動は原則自由であるため、民間団体によるボートマッチは規制の対象とならないことになる。

 

 

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