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2023.02.10 政策研究

第14回 政策(議会基本条例)と議会・議員(上)

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議会議基本条例の改正

 ところで、条例は必要性に応じて改正が行われるものであるが、関心を持っていないと改正が必要であるにもかかわらず行われないということも考えられる。また、改正については、自ら考えるだけでなく、他の議会の条項を参照することも考えられる。なお、このことは、自治基本条例や総合計画条例をはじめとして条例一般、さらには政策一般にも当てはまることである。
 栗山町議会ホームページによれば、栗山町議会基本条例は2006年5月の制定後、2022年末までの16年間に10回の改正が行われている。栗山町議会は議会基本条例21条において見直しの規定を定めており、1年ごとに実施するとしている。

議会基本条例が果たした役割と残された課題

 では、制定が広がった議会基本条例が果たした役割は、どのようなものであったろうか。廣瀬克哉は、議会基本条例が議会改革に新しくもたらした作用を、①新しい改革理念の明示、②議会改革を総合的に提示するパッケージ化と改革の推進、③市民との対話の場の多様な展開など新しい改革実践の普及、④改革の制度的定着の4点に整理し、それらを通じて理念的な側面、制度化の効果、実践面での有効性などにまたがる議会基本条例の改革推進機能を確認している(廣瀬 2016:8-9)。
 その上で、残された課題の焦点は議場にあるとする。すなわち、議会基本条例時代の改革理念に照らすならば、議会の活動そのものが、その自治体の政策課題をめぐる多様な意見や情報が飛び交う場となるべきであり、その場での議論それ自体が、論点を社会に発信していく力を持つことが期待されている。多くの市民の関心を引きつけることができなければ、豊富な意見や情報が議会に集まることは期待できず、世論形成は進まない。議会の審議によって民意を反映した議決がなされるという実感も生まれない。これは議事機関としての議会の使命の根本に関わることであり、議会活動の本質に直結している。地道にちゃんと活動しているからよいのだといってしまうわけにはいかないという(廣瀬 2016:13)。
 そして、議会の活動を議会内だけで完結させてしまうのではなく、それ自体が市民に対して開かれていて、様々な形で参加できる場となっていることが必要だという(廣瀬 2016:13)。議会基本条例の誕生以来の10年間で、市民と議会との多様な意見交換の場は全国に広がった。これまでのところそれは、議場から外に出て、議会側が市民生活の場に出ていくというスタイルで展開されてきた。しかし、議会が議場で行う活動そのものを、市民と議会との対話の場にすることに、これからの課題の焦点があるのではないか。長崎県小値賀町議会の模擬公聴会はそのヒントの一つである。このような創意工夫が各地で展開され、効果的な手法がやがて多くの自治体議会で広がっていくことを期待したいという(廣瀬 2016:13)。
 さらに、廣瀬は、松下が基本条例の制定について、空文化のリスクがあることを指摘しているとした上で、基本条例の制定状況と、自治体議会の運用実態を対比してみるとき、最も空文化がうかがわれるのが、自由討議であるとしている。制度上の理念のみ確立され、運用が追いついてきていない議員間討議(議員間の自由討議)〔( )内は筆者補注〕は課題であると指摘する(松下 2005:108、廣瀬 2017:133)。
 議会が議場で行う活動そのものを、市民と議会との対話の場にすることに、これからの課題の焦点があるとの指摘と、制度上の理念のみ確立され、運用が追いついてきていない議員間討議(議員間の自由討議)〔( )内は筆者補注〕は課題である、との廣瀬の指摘は適切であるといえよう。制定するだけのアクセサリー議会基本条例の出現は、議会関係者の「建前としては議会基本条例が必要であるという表層心理」と「本音では『面倒だ』、『混乱したくない』、『時間がかかってしまう』、『制定(運用)したくない』という深層心理」が競い合った帰結といえる。このような空文化を超克するためには、深層心理を変容することが求められる。
 もちろん、議会基本条例未制定の議会があることも忘れてはならない。そのような議会においては、他の議会に学ぶことが有意義であろう。優れた議会が年々増えている。

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