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2023.01.25 議会改革

第35回 判決に見る自治体議会─裁判所は自治体議会をどう見ているか─

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(3)議会の規律権と裁判
 さらに、議会の規律権についても、裁判所は審査の対象としており、例えば、最判昭和33年2月4日民集12巻2号119頁は、議会の会議中、議場が騒然として議長が整理することが困難な場合は、議員中に閉議に異議のある者があっても、議長は職権で閉議することができるとの判断を示すなどしている。また、地方自治法132条が用いてはならないとする「無礼の言葉」についても、札幌市議会除名事件・最判昭和27年12月4日行裁例集3巻11号2335頁は、議員の議会において使用した言葉が132条所定の「無礼の言葉」に該当するか否かは法律解釈の問題であるとし、裁判所はその該当性について判断を示してきている一方で、議長の議員に対する発言の取消命令については、愛知県議会発言取消命令事件・最判平成30年4月26日裁判集民258号61頁は、その適否は議会における内部規律の問題として自治的措置に任せるのが相当であり、裁判所の審査の対象とはならないとの判断を示している。
 そのような中で、とりわけ多くの紛争が裁判所に持ち込まれてきたのが、議員の懲罰である。この点、両議院における議員の懲罰については一般に裁判所の審査の対象とはならないと解されているのに対し、自治体議会の場合には、裁判所の審査の対象となりうるとされ、例えば、札幌市議会除名事件最高裁判決は、「地方自治法一三五条所定の懲罰の四種類中のいずれの懲罰を科すべきかは所論のように全然市議会の自由裁量に属するものといえない」とする。
 もっとも、山北村議会出席停止事件・最大判昭和35年10月19日民集14巻12号2633頁は、自律的な法規範をもつ社会や団体にあってはその規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せているとしていわゆる部分社会論を採用し(7)、議員の除名処分は裁判所の審査の対象となるのに対し、出席停止は対象とならないとした。これに対しては、自治体議会の自律権を考慮したものとの評価も見られた一方で、批判も少なくなかったが、この判例は、長年、自治体議会の自律と裁判所の審査に関するリーディングケースとも目されてきた。
 ただ、その一方で、最高裁判決においても、自治体議会について「自律的な法規範をもつ社会ないしは団体」という表現は次第に用いられなくなり、さらに、岩沼市議会出席停止事件・最大判令和2年11月25日民集74巻8号2229頁が、「出席停止の懲罰は、議会の自律的な権能に基づいてされたものとして、議会に一定の裁量が認められるべきであるものの、裁判所は、常にその適否を判断することができる」として、判例を変更するに至った。
 

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