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2023.01.25 議会改革

第35回 判決に見る自治体議会─裁判所は自治体議会をどう見ているか─

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(2)議会の規則制定権と裁判
 また、会議規則についても、それが議会の自律的権能を表現するものであるならば、その所管事項にとどまる限り、その自主的決定権、自主的解釈権、具体的手続の適否に関する認定権をもち、これらについては原則として他の機関の関与が認められないことになるはずだが、自治体議会の場合には、会議規則の議決に権限の踰越(ゆえつ)や法令違反がある場合には、長の違法再議等の対象となりうるとともに(6)、会議規則に違反した議会の議決についても違法再議、さらには総務大臣や都道府県知事の裁定、機関訴訟による裁判所の審査の対象とされているほか、裁判所は、主観訴訟において、会議規則との関係で議会の議決の有効性などが争われる場合には、その解釈・評価を行ってきている。
 会議規則に関する裁判例としては、例えば次のようなものがある。

  • 地方自治法120条に基づく会議規則には会議の運営に関係のない事項を規定することはできないなどとした東京高判昭和24年2月19日行裁月報13号96頁
  • 会議規則に議会は議長が開議を宣告することによって活動を開始する旨の規定があっても、現実に議長が議長席に着き当日の議事進行について発言をしたときは、既に議事が進行し始めたのであるから、たとえ形の上で開議が宣告されていなくても、そのときにおける議長・議員の発言は議会における発言と認めるべきとした名古屋地決昭和29年6月9日行裁例集5巻6号1445頁
  • 会議規則中の「議長は、表決を採ろうとするときは、表決に付する問題を宣告しなければならない」旨の規定にいう「問題の宣告」とは、議案の文言を逐一正確に述べることを要求しているものではなく、議員に対してこれからどのような議案につき表決がされようとしているかを周知させうる程度の告知をもって足りるとした大阪地判昭和33年4月24日行裁例集9巻7号1476頁
  • 会議規則で起立表決によるべき旨を定めていても、これは議題につき意見が一致しない場合にその表決をするときの規定であって、満場一致賛成という場合にまでその方法による採決をしなければならない趣旨とは解されないとした千葉地判昭和30年3月25日行裁例集6巻3号668頁
  • 議会の決議が会議規則に定める時間を過ぎてなされたとしても、そのために当該決議が無効となることはないとした千葉地決昭和33年3月27日行裁例集9巻3号493頁
  • 会議規則における会議の散会時の規定はその性質から見て効力規定ではなく、むしろ訓示規定と解するのを相当とした東京高判昭和33年8月20日民集13巻6号867頁


 地方自治法の規定に反しない限りではあるものの、会議規則に関する自治体議会の裁量はそれなりに広いと考えるべきであるが、会議規則とはいえ、裁判所がその解釈を示せば、それが有権解釈となり、その確定した解釈は類似の規定をもつ他の自治体議会の会議規則にも何らかの形で及びうる。そして、以上を見る限りでは、会議規則に関する議会の自律性が高いとまではいえないことになりそうだ。
 

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