2023.01.25 議会改革
第35回 判決に見る自治体議会─裁判所は自治体議会をどう見ているか─
(1)議会の組織権と裁判
議会の組織権としては、議長・副議長等の選挙と辞職の許可、議員の辞職の許可、議員の資格決定などが地方自治法で規定されており、選挙や資格決定については、長の違法再議の対象とはならないと解されているものの、選挙による決定や資格決定に不服がある場合には、総務大臣又は都道府県知事への審査の申立て、さらには裁判所への出訴が認められている(同法118条5項・127条3項)。
実際に、議会における選挙については、その方法や投票の効力に関する異議をめぐって裁判所が審査を行い、判断を示している(3)。また、当該自治体に対する議員の請負等の禁止を定める地方自治法92条の2の規定該当に関する議会の決定についても、当該決定に対し地方自治法127条4項(現3項)・118条5項の不服申立てをすることができる者は決定によってその職を失うこととなる議員に限られるとする最判昭和56年5月14日民集35巻4号717頁、議会の決定の取消訴訟とともに行った執行停止の申立てにつき、原々審がその失職に伴う補欠選挙前に執行停止決定を行ったものの、他の者が当選した当該補欠選挙及び当選の効力に関し公職選挙法の異議の申出が法定期間内になされなかった場合には、本案訴訟である取消訴訟で議会の決定が取り消されたとしても議員の地位を回復できないとした最決平成29年12月19日裁判集民257号43頁などの判例がある(4)。議員の被選挙権を有しないものであるとの議会の決定を取り消した裁判例(例えば東京地判平成30年4月15日行裁例集6巻4号1017頁など)も見られる(5)。
議員の辞職の許可をめぐる争いについても、裁判所は審査を行っており、何ら正当の理由なくして議会が議員の辞職許可を拒否し、あるいは積極的に拒否しないまでも市長当選承諾期間内に許可の議決をしないようなことは、法律によって与えられた議会の権限の正当の行使とは認めることはできず、このような状態によって辞職許可を得られなかった場合は許可がなくても辞表の提出に辞職の効力を認めざるをえないとした最判昭和24年8月9日民集3巻9号329頁、村長選挙に立候補するため村役場で村議会書記に口頭をもって行った議員を辞職する旨の申出は辞職申出としての効力を有するとした最判昭和28年5月15日民集7巻5号568頁、議長に議員辞職願を提出して許可されたことにつき、当該議員は自らの辞職と引替えに町長を辞職に追い込むためのパフォーマンスとして辞職願を提出したものであり、議長がこのような経緯を知り又は容易に知ることができながら許可することは議長に付与された裁量権の範囲を超え、又はこれを濫用したものといわざるをえないとして許可処分の取消しを認めた大阪地判平成20年5月16日判時2027号7頁などの判決がある。
このように地方自治法が定める議会の組織権をめぐる紛争は、裁判所の審査・統制の対象とされてきている。
なお、地方自治法100条12項は、自治体議会では会議規則により協議・調整の場を設けることができるとしているが、明石市議会代表者会事件・神戸地判平成30年2月1日裁判所ウェブサイトは、同規定は会議規則によらずにそのような場を事実上設けることを妨げるものではないとした上で、代表者会の設置や組織運営については、議会の内部規律の問題としてその広範な裁量に委ねられ、代表者会をどのような構成にし誰を招集するかも議会自らが最終的に判断すべき事項といえるのであり、代表者会に出席する権利は、議会内部において有する権利利益にとどまり、会派の代表者が代表者会に出席できないことによって一般市民法秩序において保障される権利利益が損なわれることにならないとする。