2023.01.25 議会改革
第35回 判決に見る自治体議会─裁判所は自治体議会をどう見ているか─
慶應義塾大学大学院法務研究科客員教授 川﨑政司
本連載では、自治体議会をめぐる裁判例についても数多く取り上げてきたが、高度の自律権が認められている国会とは異なり、自治体議会の運営や活動については、内部規律の問題として自律的判断に委ね、あるいは議会に認められる裁量の範囲内にとどまる場合(1)を除き、裁判所の審査・統制の対象とされている。住民訴訟、機関訴訟などの制度の存在もこれを後押しする。自治体議会法といったものを観念する場合には、判例の比重の大きさはその特徴の一つといえるだろう。
そのような中で、裁判所の判決から垣間見える自治体議会像はどのようなものであり、また、裁判所は、自治体議会の運営・活動やそのあり方についてどのような見方をしているのだろうか。既に紹介してきた裁判例も少なくなく、重複するところもあるが、改めて見ておきたい。
1 自治体議会の自律
国会の両議院については、憲法上、広範な議院自律権が認められ、議院の運営・活動に対しては原則として裁判所の審査は及ばないとされている(2)。
これに対して、自治体議会の自律権については、限定的なものにとどまるとの見方がなされ、その運営・活動については裁判所の審査の対象とされてきた。この点、例えば、佐賀県議会議員免責特権事件・最大判昭和42年5月24日刑集21巻4号505頁は、「憲法上、……地方議会についても、国会と同様の議会自治・議会自律の原則を認め、さらに、地方議会議員の発言についても、いわゆる免責特権を憲法上保障しているものと解すべき根拠はない」とした上で、「地方議会についても、法律の定めるところにより、その機能を適切に果たさせるため、ある程度に自治・自律の権能が認められてはいるが、その自治・自律の権能が認められている範囲内の行為についても、原則的に、裁判所の司法審査権の介入が許されるべき」とする。
自治体議会の自律権は、議会がその役割・機能を適切かつ円滑に果たすためにその組織や運営について自主的・自律的に決定し処理することが認められるものであり、その中核的なものとして、議会の内部組織の設置や構成員・役員の選任などを行う内部組織権、会議規則等の規則制定権、議場の秩序保持・議員の懲罰などの規律権が規定されている。これらについては、基本的には、議会の内部的問題としてその裁量・判断に委ねられているといえるが、その一方で裁判所等による統制を受けうるものともなっている。