2023.01.25 政策研究
第12回 有機農業の普及で健全な地球環境の実現に貢献しSDGs達成を(3)
学校給食への有機農産物利用のハードルはまちごとに異なる
いすみ市の成功事例は、どこでも同じように取り組めるわけではない。学校給食の食材として、有機農産物を利用するためには、いくつかのハードルが待ち構えているからである。大きく分けて、受入れ側の学校給食側の問題と、供給側の問題がある。
まず、学校給食側の問題を見てみよう。学校給食の基本的な仕組みは、基礎自治体の議員であり、かつ教育分野を得意としている議員であれば、よくご存じのはずだ。
学校給食は、一般的に、1か月分のメニューがあらかじめ示される。学校給食で必要とされる栄養バランスを1か月単位で過不足なく摂取できるよう、厳密に計算されている。そのため、その日のメニューに合わせた人数分の食材が、その日の朝までにきちんとそろわないといけない。
いすみ市の場合は、米なので、そういった心配はまずない。米は生鮮食品とはいえ保存が利くし、鮮度もそれほど落ちない。一方でほうれん草や小松菜などの葉物野菜の場合は、少し厄介だ。まず、米ほど長期には鮮度を保てない。また、自然が相手なので、計画した時期に収穫最盛期を迎えるとも限らない。早くなっても遅くなっても、すでにメニューが決められている以上は、決められた期日に一定量を納入してもらわなくてはならない。
また、給食設備についても地方公共団体ごとに異なり、センターで一括調理して各学校に輸送するセンター式と、自校に給食調理施設が備わっている自校式に大きく分類できる。センター式の場合、用意しなくてはならない食材の量は、複数校に配送する関係から、自校式に比べて相対的に多くなる。したがって、有機農産物の供給体制が整うまでは、まずは自校式の学校から取り組むのがよいだろう。
少し古いが、2001年に農林水産省がまとめた「学校給食への有機農産物の供給について」(https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/pdf/5_2_kitakata.pdf)では、「学校給食で有機農産物を使用するにあたっての主な課題」をまとめている。
「(1)調理場の規模 学校給食は、午前中の限られた時間内に調理を完了する必要があり、調理食数が多い調理場においては、機械類(皮むき機、裁断機等)を使用し、効率よく調理を進めることが重要であり、食材の大きさや形状が揃っていることが前提となります。
そのため、大規模な調理場(調理食数の多い調理場)においては、大きさや形状が揃っている有機農産物を大量に調達できることが条件となります。」
「(2)生産体制の拡大と供給体制の確立 学校給食には、安定的に供給できることが重要であり、そのための生産体制の拡大と供給体制の確立が必要となります。」
「(3)有機農産物使用による給食費への影響 有機農産物は慣行栽培のものに比較し多少価格が高いため、その分が給食費に影響することとなります。給食費の値上げには、十分に保護者の理解を得て進めることが必要です。」