充実した選挙のためのもう一歩
本稿では、前回の統一地方選挙の際に踏まえなければならなかった論点が今回も継続しているにもかかわらず、この論点が争点とはなっていない状況を確認した。同時に、これらの論点を争点化する主体が育ってはいない状況(投票率の低下、議員のなり手不足)も確認した。そして、これらを打開するには、討議空間を多様な層でつくり出すことの必要性を提起した。ぜひこうした討議空間をつくり出してほしい。議会は、意見交換会などの多様な広聴活動を行っているが、単なる情報提供・政策に関する提案として受け止めるだけではなく、今後の地域の方向を語り合う市民(主権者)教育の場として位置付ける必要がある。
最後に、統一地方選挙を活性化させる課題を探っていこう。詳細は別稿に委ねざるを得ない。
① 女性の政治進出を:単に女性議員が少ないということだけではない。政策の偏りを是正するためである。女性へのまなざしは、障がい者、LGBTQ+、外国籍住民を含めた多様な住民の政治参加の突破口になる。
② 選挙に行こう運動から政策を読む力を:「選挙に行こう」といったスローガンの運動が旺盛に繰り広げられている。しかし、投票しようにも、投票基準、政策の読み方が分かっていなければ投票はできない。ちなみに、「自分と同じ考えの候補者がいない」から投票に行かないという住民がいる。政党員でさえ、党の政策にすべて同意しているわけではないであろう。ベターで選択するしかない。だからこそ、投票した候補者のその後を監視する責務が発生する。選挙管理委員会などによる選挙手帳の配布は必要である。
③ 立候補の解説書・政治塾を:政治に関心があり、立候補しようとする住民もいる。実際に選挙に出る際に、費用や運動の仕方などが分からなければ立候補はできない。政治塾の活性化やマニュアルの作成が必要である。これを担った議会は前回紹介している(北海道浦幌町議会。江藤俊昭「統一地方選挙を住民自治の進化に(下)─マニフェスト選挙:再考─」(「新しい議会の教科書」第24回)議員NAVI 2018年12月10日号、3(3)マニフェスト作成支援制度②参照)。また、住民が主体となり立候補を促す政治塾の開催が広がっている。
④ 投票所の環境整備:投票所の削減、投票時間の短縮が行われている。それには理由があるとはいえ(その場所、あるいはその時間に投票者が少ない)、明らかに投票率向上とは逆行する。削減や短縮の場合は、投票所への移動手段の確保(期日前投票の場合も)が必要だ。なお、LGBTQ+の住民は、投票所の有権者名簿に性別が書かれている場合、投票に行きにくい。障がいにもよるが、障がい者は投票日に急きょ体調が悪くなり投票に行けない場合がある。移動手段などの整備は早急に進めなければならない。
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2023年が地方政治の再活性化(投票率の上昇や議員のなり手不足の解消)に向かう起点となることを期待したい。個々の取組みとともに、住民自治を進めるという原理的な視点からの実践が求められているのではないだろうか。「住民自治の根幹」としての議会、「フォーラムとしての議会」を進めることが政治に役立つことを再度強調しておきたい。