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2023.01.12 政策研究

第13回 政策(総合計画・総合計画条例)と議会・議員

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総合計画条例も自治体に求められる

 神原は、自治基本条例、議会基本条例、総合計画条例という三つの条例が相乗して二元代表制の展開と自治体の政策活動に質的変化をもたらす可能性を追求している(神原 2015b:284)。神原によれば、栗山町議会は、議会改革の主軸としてきた、①市民と議会の交流、②長と議会の機関緊張、③議員間討議の推進、を効果的に進めるために議会基本条例の制定当初から、議会が総合計画に向き合うことの重要性を認識していた(神原 2015b:285)。その意味で総合計画条例の制定は、政策議会の構築を目指す議会改革の重要な一環として構想されたとされる(神原 2015b:285)。神原は、自治体は地域社会に生起する公共課題を政策によって解決するために市民がつくる地域政治であり、その政府の政策活動の基本枠組みとして総合計画はあるとする(神原2015a:1)。そして、自治体運営の最高規範である自治基本条例に、総合計画に基づいて政策を行う原則を明記し、それを誠実に実行するのは当然であるとした上で、総合計画に基づく政策が、市民意思を体現し、かつ厳格な財務規律のもとで、質高く行われるためには、総合計画の手法の改革が不可欠である。これからの総合計画には、公開、参加、評価、財務、法務などと緊密に結びつけた策定と運用の手法を確立し、それを安定的・継続的に履行するために、条例によって規範化することが求められる。こうして、総合計画条例が2010年代に入り登場し始めたことを指摘している(神原 2015b:288)。
 総合計画と総合計画条例は、自治基本条例や議会基本条例と市民をつなぎうる可能性を持つ。総合計画条例は、そのことを担保する規範でもある。総合計画の情報にアクセスしたい人がアクセスでき、参加したい人が参加することができるシステムがあることは大切である。しかしながら、誰もアクセスしないと、総合計画策定の効果は総合計画がない状況と変わらないという問題がある。そこでは、一義的に自治体政府(議会・行政)が総合計画を市民のところに積極的・主体的に届けること(アウトリーチ)が求められる。アウトリーチにより、総合計画は周知・活用されることになる。そのため、アウトリーチに関する内容・規定は、総合計画・総合計画条例に盛り込まれることが求められる。

「総合計画の変容」と「総合計画条例の誕生」

 神原によれば、総合計画の世界には、大きな変化が起きてきた。第1に、自治基本条例を持つ自治体の多くが、条例の中に総合計画規定を設け、中には実施する政策はすべて総合計画に根拠を持つべきことを明定しているものがあることである。第2は、自治基本条例あるいは議会基本条例において、基本構想のみならず、それを含む総合計画(基本構想・基本計画〔( )内は筆者追記〕)を議決事項に規定する議会が増えていることである。そして、従来の三重層計画(基本構想・基本計画・実施計画)が、財務規律と政策の質の確保を踏まえた今日的な政策活動の要請に対して実効性に乏しいことや、首長の選挙公約が総合計画に反映されないなどの問題を解決するために、総合計画の手法を革新する自治体が出始めている。これを第3の変化とすれば、その手法を総合計画条例に高めた自治体の出現(武蔵野市が2011年12月に制定した「長期計画条例」(=総合計画条例))は第4の変化といえるという(神原2019:295-296)。
 第4の変化、すなわち、総合計画条例の制定という思考に至ったことは、総合計画が従来に比べて、より安定的・恒常的・安定的な役割を発揮することが制度的にも確立されたといえる。

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