2023.01.12 政策研究
第13回 政策(総合計画・総合計画条例)と議会・議員
結び
自治体の条例体系は、国法制度との整合という一定の制約を伴うものの時間をかけつつ、多様な条例体系の構築と条例内容の形成について試行錯誤を重ねている。そこでは、地域の特性を生かすことのできる体系と内容に条例が成熟し洗練することが目指されよう。条例の運用に当たっての多様なアクター(市民・議会・行政・専門家等)による定期的な検証の仕組みの存在と実践は、そのことを促進させるであろう。このような地域での取組みが国法制度の成立(改正)につながることもある。これらの取組みは、2000年分権改革とその後の歩みを、一層内実のあるものとすることにつながりうる(田中 2018b:47)。
また、国の政治・経済・社会と同じように自治体の政治・経済・社会も、どちらかといえば短期的視野・狭窄的視野に陥る可能性がある。そこには、見え隠れする国の圧力が影響しているかもしれないし、減少する政策資源と増大する行政需要が作用しているのかもしれない。本稿の冒頭に述べた、人を助けたいと思う気持ちや4年に一度の選挙がそうさせるのかもしれない。
しかし、少しでも長期的視野・広大的視野を併せ持つ自治体議会・議員に期待したい。議会によるアウトリーチ(総合計画の策定過程・運用過程・評価過程において、議会が総合計画を市民のところに積極的・主体的に届けたり、意見を聴いたり、話し合い〈議論〉をすること)は重要であり、総合計画条例にはアウトリーチに関する規定を含むことが求められている。それらのことは、市民・自治体政府〈議会・行政〉の地域に対する問題意識欠如を防ぎ、地域の劣化を超克しうる。
■参考文献
◇礒崎初仁(2020)「自治体の政策と総合計画」礒崎初仁=金井利之=伊藤正次『ホーンブック地方自治〈新版〉』北樹出版、94~107頁
◇一條義治(2020)『これからの総合計画─人口減少時代での考え方・つくり方〈増補・改訂版〉』イマジン出版
◇片山善博(2010)「『総合計画』に頼らない『計画』」ガバナンス108号、14~17頁
◇神原勝(2015a)「自治体総合計画の歴史と到達点」神原勝=大矢野修『総合計画の理論と実務』公人の友社、1~13頁
◇神原勝(2015b)「総合計画条例と政策議会への展望」神原勝=大矢野修『総合計画の理論と実務』公人の友社、283~339頁
◇神原勝(2019)『議会が変われば自治体が変わる【神原勝・議会改革論集】』公人の友社
◇鈴木洋昌(2019)『総合計画を活用した行財政運営と財政規律』公人の友社
◇田中富雄(2015a)「議会改革の成果を高めるツールとしての総合計画」廣瀬克哉=自治体議会改革フォーラム編『議会改革白書2015年版』生活社、34~40頁
◇田中富雄(2015b)「地域計画型総合計画の現状と課題」龍谷政策学論集(龍谷大学政策学会)4巻2号、153~170頁
◇田中富雄(2018a)『実例でわかる!すぐ使える! 公務員の議会答弁の書き方』学陽書房
◇田中富雄(2018b)「総合計画条例の内容と役割」地域政策研究(高崎経済大学地域政策学会)21巻1号、31~48頁
◇土山希美枝(2016)「自治体運営の〈全体制御〉とその手法:資源と事業の均衡ある運営のための制御のシクミを考察する」龍谷政策学論集5巻2号、43~54頁
◇松下圭一(1991)『政策型思考と政治』東京大学出版会