地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2022.12.28 政策研究

第11回 有機農業の普及で健全な地球環境の実現に貢献しSDGs達成を(2)

LINEで送る

有機農業推進には「環境保全型農業直接支払交付金」(環境直払)の活用の検討を  

 さて、では実際に、有機農業の推進に当たって、我がまちではどこから手をつければよいのだろうか?  
 農業経営体にとっては、有機農業の重要性は理解できたとはいえ、実際にこれまでの当たり前のように化学肥料や化学農薬を使う慣行農業を有機農業に変えて、農産物の収量や品質が低下した場合、現状では誰も保証してくれない。そこで、有機農業に取り組むためのインセンティブを用意することが重要になってくる。  
 いくつかのインセンティブをこれから紹介したい。理想的なのは、農業経営体にとっては、(1)有機農業でつくった農産物が慣行農業による農産物より高く売れることだ。だが、そのためには、「高く買ってくれる消費者」がいなくてはならない。また、どの農産物が本当の有機農業でつくられた農産物であるかが、一目で分かる目印も必要になる。
 この目印となるマークは、前回紹介した「有機JASマーク」である。しかし、このマークの利用は、そう簡単ではないことも紹介した。そのため、もう一段緩い基準で、何らかの環境配慮(減農薬、減肥料)を行っていることを、商品に目印やネーミングを付ける試みも増えている。例えば「特別栽培農産物」や兵庫県豊岡市の「コウノトリ育むお米」などの事例である。  
 (2)品質はともあれ、有機農産物を生産すれば必ず売れることを約束するという方法もある。これは次回紹介するが、地域の学校給食で、生産した有機農産物をすべて買い取って、積極的に利用する政策を実施することである。欧州において有機農業が普及するきっかけとなった方策でもある。農業経営体にとっても、有機農業で生産した農産物が確実に売れることは、必須要件である。  
 (3)何らかの環境配慮を行った農業生産に対して、生産量に応じた一律の交付金を支給する方法もある。これなどは、収量の減少や品質のばらつきによる損失補償の要素もあるといえよう。  
 今回は、この(3)の事例「環境保全型農業直接支払交付金」(以下「環境直払」という)について紹介する。
Chikyukankyoumondai_zu2
出典:農林水産省「令和4年度環境保全型農業直接支払交付金の予算の概要」(https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/kakyou_chokubarai/attach/pdf/mainp-15.pdf

図2 環境保全型農業直接支払交付金(「環境直払」)  

 この制度は、いくつかの政策メニューが用意されているが、図2にあるように、条件を満たす団体や農業者(個人・法人)が有機農業に取り組んだ場合、10a当たり1万2,000円が交付される。さらに炭素貯留効果の高い、堆肥の施用、カバークロップ、リビングマルチ、草生栽培のいずれかを実施した場合、2,000円が加算される。  
 この制度を導入することによって、国としては、有機農業にチャレンジする農業経営体を増やそうという意図があるようだ。  
 ただ、実際の交付金支給までたどり着くのは、そう簡単ではない。農林水産省農産局「令和3年度 環境保全型農業直接支払交付金の実施状況」(https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/kakyou_chokubarai/other/attach/pdf/r3jisshi-1.pdf)によれば、この交付金は、市町村は全体の4分の1を一般財源から支出しなくてはならないこともあるためか、実際にこの制度を利用している市町村は、2021年度は846市町村で、全1,718市町村の49%となっている。  
 有機農業の実施実績に限っていえば、全国で1万1,610ha。1ha=100aなので、10a=1万2,000円で計算すると、全国で約14億円が交付されていることになる。有機農業の面積は、2020年で2万5,200haと報告されている(農林水産省「有機農業をめぐる事情」2022年7月(https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/meguji-full.pdf))ことから、年度が1年ずれているが、ざっと約45%の農地で、この制度を利用していることになるようだ。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る