2022.12.28 政策研究
第11回 有機農業の普及で健全な地球環境の実現に貢献しSDGs達成を(2)
プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)に達しないためにも有機農業を!
図1からも分かるように、「成層圏オゾンの破壊」は、「限界値以下:安全」で、まだ限界には達していないとされている。
「気候変動」については、「不安定な領域:リスク増大」にはあるが、まだ取り返しがつく状況と判断されている。
一方で、「不安定な領域を超えている:リスク大」項目が、「生物圏の一体性」つまり生物多様性のうち(生物種の)絶滅の速度、「窒素・リンの生物地球化学的循環」とりわけ窒素循環、「新規化学物質」である。
いずれの項目も限界を超えないために優先的に取り組むべきなのが、有機農業の推進である。
出典:近藤雄生「地球環境の限界を示す『プラネタリーバウンダリー』が注目されている理由」(2022年8月9日)(https://social-innovation.hitachi/ja-jp/article/planetary-boundaries/)
図1 プラネタリー・バウンダリー
前回紹介したように、「有機農業の推進に関する法律」の定義では、有機農業とは「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと」とされており、プラネタリー・バウンダリーの項目でいえば、肥料使用は、「窒素・リンの生物地球化学的循環」に悪影響を及ぼす。農薬使用は「生物圏の一体性」、「新規化学物質」の項目の悪化に直接的に関係する。
国際的な有機農業の定義であるコーデックス委員会の定義では、「有機農業は、生物の多様性、生物的循環及び土壌の生物活性等、農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システムである」とされており、「窒素・リンの生物地球化学的循環」、「新規化学物質」、「生物圏の一体性」に関係する。
プラネタリー・バウンダリーの観点からすれば、これまでの農業は、地球環境リスクを増大させる主原因であるといってもよいだろう。
2021年5月に発表された農林水産省「みどりの食料システム戦略」では、「地球の限界を意味する『プラネタリー・バウンダリー』は、9つの項目のうち、気候変動、生物多様性、土地利用変化、窒素・リンの4項目で境界をすでに超え、今後は、生態系の均衡が不可逆的に移行し、負の現象が連鎖的に起こるとされている。食料・農林水産業が利活用してきた土地や水、生物資源などのいわゆる『自然資本』の持続性にも大きな危機が迫っており、早急かつ大胆な取組が求められている」とプラネタリー・バウンダリーがわざわざ引用されている。
同戦略の目標では、「化学農薬」は、「2050年までに、化学農薬使用量(リスク換算)の50%低減を目指す」、「化学肥料」は、「2050年までに、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量の30%低減を目指す」としている。