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2022.12.28 政策研究

第11回 有機農業の普及で健全な地球環境の実現に貢献しSDGs達成を(2)

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前所沢市議会議員 木田 弥

【今回のテーマから考えられる一般質問モデル案】
○プラネタリー・バウンダリー(「地球の限界」)の観点から見て、農業で我がまちが取り組むべき課題は何か?
○我がまちの農業経営体が有機農業に取り組むに当たっての課題は?
○我がまちでは、我がまちの農業経営体や団体が、農林水産省の環境保全型農業直接支払交付金(環境直払)制度に申請することは可能か?
○(不可能な場合)制度の申請を可能とすべきではないか? また、申請が不可能な理由は何か? なぜ予算化しないのか?
○(可能な場合)我がまちの本制度の利用実態は? 全国の申請状況と比べて我がまちの特徴は何か? より申請件数を増やすための方策は?


 前回は、有機農業の普及により副次的にはGHG(温室効果ガス)排出量は削減されるが、普及の主たる目的は、生物多様性の保全と生態系健全性の維持による健全な地球環境の実現にあることをお伝えした。  
 今回は、なぜ、生物多様性の保全と生態系健全性の維持が重要かを、もう少し丁寧に説明することから始めたい。そうすることで、さらに有機農業の推進の重要性を理解いただけると思うからだ。

「プラネタリー・バウンダリー」(地球の限界)とは  

 プラネタリー・バウンダリーという概念をご存じだろうか? SDGs(持続可能な開発目標)についてご存じの方は相当増えているとは思うが、SDGsに影響を与えたといわれるプラネタリー・バウンダリーについてご存じの方は、あまり多くないようだ。  
 では、「人新世(Anthropocene:アントロポセン)」という概念はご存じだろうか? この言葉については、おそらくプラネタリー・バウンダリーより知名度が高いだろう。斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書)という新書が一昨年ベストセラーになったことから、人新世という概念について何となくご存じの方は多いようだ。  
 人新世とは、「人類の経済活動の痕跡が地球の表面を覆いつくした時代」であると斎藤氏は語っている(https://wisdom.nec.com/ja/feature/workstyle/2021032401/index.html)。  
 この「人新世」概念を最初に唱えたのが、オゾンホールの研究などでノーベル化学賞を受賞したパウル・クルッツェンというオランダ人化学者。2000年の地球圏・生物圏国際協同研究計画(IGBP)の会報41号で、ユージーン・ストーマーとともに、「人新世」という造語を提案したといわれている。  
 地球の約46億年の歴史を、生物の進化と絶滅を基準に分類している「地質時代」では、現在は、新生代第四紀の「完新世」に該当する。  
 これまでは、人類はどんなに破壊活動を企てたとしても、人類の生存基盤である地球環境に、後戻りができず取り返しがつかないような大きな影響を及ぼすことはなかった。
 しかし、特に産業革命以来、人類の科学技術力の進歩によって、人類の存在そのものが、地球環境に大きな影響を及ぼすようになってきている。例えば、南極の成層圏には、オゾンの層が薄くなって、穴(ホール)のように見える場所がある。これがオゾンホールで、そもそも人類がフロンガスという人工ガスを利用したことから生み出された。大気上層のオゾン層は太陽からの有毒な紫外線を吸収してくれているが、オゾンホールがあると、紫外線が直接地表に到達しやすくなり、皮膚がんなどにかかりやすくなる。オゾンホールなどは、まさに「人新生」の典型的な事象といってよいだろう。  
 幸い、オゾンホールに関しては、フロンガスの使用禁止が世界的に進み、取り返しがつかないところまで悪化してはいない。  
 こうしたことから、現代は「完新世」ではなく、すでに「人新世」に移行したと唱える論者もいる。  
 この「人新生」の概念に影響を受けたスウェーデンのストックホルム・レジリエンス・センターの前所長であったヨハン・ロックストローム博士を中心としたグループにより2009年に発表されたのが、プラネタリー・バウンダリーである。  
 プラネタリー・バウンダリーとは、「地球の変化に関する各項目について、人間が安全に活動できる範囲内にとどまれば人間社会は発展し繁栄できるが、境界を越えることがあれば、人間が依存する自然資源に対して回復不可能な変化が引き起こされる」(環境省『平成30年版 環境白書 循環型社会白書・生物多様性白書』第1部第1章第1節「持続可能な社会に向けたパラダイムシフト」(https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h30/html/hj18010101.html))その境界(バウンダリー)である。「地球の限界」ともいわれる。  
 1972年に、ローマクラブが「成長の限界」という概念を提唱し、一世を風靡(ふうび)したが、その「成長」基盤をも揺るがすのが、「地球の限界」でありプラネタリー・バウンダリーである。  
 このプラネタリー・バウンダリーでは、九つの環境要素(①気候変動、②大気エアロゾルの負荷、③成層圏オゾンの破壊、④海洋酸性化、⑤淡水変化、⑥土地利用変化、⑦生物圏の一体性、⑧窒素・リンの生物地球化学的循環、⑨新規化学物質)を特定している。これらの項目それぞれは、どれも人類にとって重要であるが、あまりに大きく変わってしまうと、ある臨界点を境に後戻りできなくなってしまうものである。この項目には、先ほど触れた成層圏オゾンの破壊も含まれている。「生物圏の一体性」は生物多様性と考えていただいた方が分かりやすいと思う。

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