最新の選挙事情・選挙戦術
(1)ますます重要性が増す「ネット・SNS」対策
「インターネットを利用した選挙運動」(以下「ネット選挙」という)が解禁されてから約10年。今では「Twitter」や「Facebook」といったSNSをはじめとするインターネットを活用した選挙運動が、候補者や政党がメッセージを発信する上で、その重要性が年々高まっている。
ネット選挙については、斯界第一人者である田代光輝氏(慶應義塾大学教授)が次月で述べられる予定と伺っているため、ここでは3点のみ紹介する。
① 動画(YouTube等)の長さは90秒程度がベスト。多くがスマートフォンを利用し、音声なしで見るため、可能な限りテロップを挿入する。
② 告示の1か月前頃からは、ターゲティングが可能な「Facebook広告」や「Instagram広告」は検討に値する。ただし、業者は厳選すること。
③ 今や、候補者のオフィシャルサイト等をパソコンで見る人はまずいない。スマートフォン対応の徹底を。
(2)選挙情勢調査・分析
選挙情勢をできる限り正確に把握・分析し、戦略・戦術を構築する上で、近年では地方選でも「選挙情勢調査」は欠くことのできない必須事項だ。都道府県知事選はもとより、市区長選、都道府県議選等で、独自に選挙情勢調査(電話調査:オートコール)を実施する陣営が急増している。
それにより、各々のセグメンテーション別(性別・年代別・地域別・支持政党別等)の自身や対抗馬の強弱が客観的に明確となり、その後の戦略・戦術の構築や、活動に活用していくわけだ。選挙は「自分の強いところはさらに強く」、「相手の弱いところを突いていく」のが基本の一つだ。
そのためには、実績がある信頼のおける調査会社に依頼することが重要。ただし、定数が多数となる市区議選の場合、選択肢が多くなり、現職以外、数字が出にくくなるため、特に新人の方等は実施の可否を含め、慎重な見極めが必要だ。
(3)キャンペーングッズ
① 演説会告知用(弁士型)ポスター・のぼり(二連ポスター・二連のぼり)
個人ポスターには掲示期間に制限(任期満了日の6か月前の日から選挙期日までの間は掲示できない)があるため、告示日まで掲示可能な演説会告知用(弁士型)の「二連ポスター」は「知名度」、「認識度」を向上させる有効なツールだ。
また、候補者の名前だけを記載したのぼりを見かけることがあるが、これは「売名行為」に該当する。したがって、政党公認の候補者は「政党二連ポスター」の“のぼりバージョン”を、それ以外の候補者は、後援会ではない政治団体の“のぼりバージョン”を作成し、街頭等に掲げることが効果的だ(二連ポスター、並びに二連のぼりは、2人の弁士部分と政党(政治団体)が主催する演説会告知部分の面積比を、全体の3分の1ずつにすること)。
② 選挙ビラ等(含:政治活動ビラ)
選挙ビラは2種類まで作成・頒布が認められているが、街頭等で頒布しようとしても、街からごみ箱が減り、コロナ禍ということもあって、なかなか受け取ってもらえない。
ところが、頒布用は名刺サイズに折り畳む(A4判の九つ折)ことで受け取ってもらえる可能性が大幅にアップする。残ったものは「新聞折込」をすることが多いが、正直、その効果はあまり期待できない。
③ 選挙公報
選挙公報は、候補者自身の訴えを有権者に届けるものとして、相応の効果がある。なぜなら、全戸配布(原則)される上に、すべての候補者の訴え(内容)、デザイン等が、その紙面で比較できるからだ。
前回の選挙公報をよく見比べてみてほしい。選挙公報を重要視している候補者かどうか、一目瞭然で分かると思う。
自己満足的なものではなく、有権者目線で、(良い意味で)他の候補者より目立つ、良いものを作成していただきたい。