2022.12.26 議会運営
第14回 「議長マニフェスト」を起点に戦略的な「議会経営」を~岩手県奥州市議会の取組み~
「議長マニフェスト」は市民との約束
2022年3月、奥州市議会選挙が行われた。改選後の議長選挙で議長になった菅原由和議長は、議長就任希望者として述べた所信表明を、市民との約束と位置付け、任期4年間に議会として取り組む具体的な重点項目と工程表を付けた「議長マニフェスト」としてまとめ直した。その「議長マニフェスト」を会派代表者会議、常任委員会の正副委員長会議、議員全員協議会で諮り、議会の公式なものとして公表した。前任期に軌道に乗り始めた議会改革の取組みを不断のものにするためである。
議長マニフェストは、①奥州市議会の「見える化」の推進、②広報・広聴活動の充実・強化、③政策立案・政策提言サイクルの充実・強化、④議員間討議の制度化による十分な審議と市民への説明責任、⑤議員の成り手不足解消の調査研究と対策の実施、主権者教育の推進、の五つの柱から構成されている。
奥州市議会の「見える化」としては、実行計画による実行目標と工程の明確化、各委員会の活動状況等の見える化、議会改革の取組み状況とアウトカムの評価・公表、議会ICT推進方針の明確化。
広報・広聴活動の充実・強化としては、広報と広聴機能の一体的な取組み体制の整備、様々な世代の市民参画と多様な市民意見の把握、広報の工夫と充実を図り市民に分かりやすい情報発信。
政策立案・政策提言サイクルの充実・強化としては、決算・予算審査の連動による政策提言サイクルの構築、広聴活動で把握した市民意見を反映させる仕組みづくり、各常任委員会の継続した政策提言の実施とフォローアップ。
議員間討議の制度化による十分な審議と市民への説明責任としては、対話をベースにした議員間討議の制度化、重要課題等の十分な審議と合意形成、結論に至る経過の明確化。
議員の成り手不足解消の調査研究と対策の実施、主権者教育の推進としては、議員の成り手不足解消に向けた調査研究と対策の実施、議員定数及び議員報酬の在り方の調査研究、小中高生・若者・女性との模擬議会、ワールドカフェや議場・議会見学会の実施と主権者教育の推進、が重点項目として示されている。
「議長マニフェスト」のポイントは、任期4年間の工程表において議会内の各組織(議会運営委員会、常任委員会、議会改革検討委員会、議会広聴広報委員会、市政調査会)に、上記の重点項目に対して具体的役割を提示したことである。
既に、各常任委員会では活動計画を作成し所管事務調査のテーマを明確にしたり、広聴広報委員会を再編したり、9月の決算認定に際して、政策提言を付帯決議し新年度予算審査へ連動させたり等、「スピード重視」でできることから取り組んでいる。
議長マニフェスト工程表
決算審査における議員間討議