2022.12.26 議会改革
第34回 議員定数の問題にどう臨むか
6 自治体議会議員の代表としての位置付け
自治体議会の議員の定数や選挙区への定数配分において重要な要素となるのが「人口」であるが、この人口については国勢調査人口によるのが一般的である。公職選挙法施行令144条は同法等における人口は、官報で公示された最近の国勢調査又はこれらに準ずる全国的な人口調査の結果による人口としており、地方自治法でも、254条で同様の規定が置かれている。
もっとも、この国勢調査人口については、日本で暮らす外国人も含まれている(27)。そして、従来においては、そのことにあまり疑問がもたれることもなく、衆参両院の議員の定数配分や区割りについても、外国人を含んだ国勢調査人口が用いられてきた。しかし、国民主権の原理に照らせば、主権を有し国家権力の正統性の基盤となるのは日本国民であって、その代表である議員の定数や配分を決める際に外国人を含んだ人口を用いることには疑問もある。
諸外国では、この点が意識され、選挙について用いる人口には外国人は含まれないと明記しているところもある(28)。最近、日本でも、この問題が意識されるようになり、衆議院議員選挙区画定審議会設置法では、2016年の改正により、衆議院の小選挙区の区割りについて、各選挙区の人口は最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいうとして、日本国民人口を用いることが明記されることになり、参議院選挙区選出議員の定数配分でも日本国民人口が用いられるようになっている。
これに対し、自治体議会の場合には、外国人を含む国勢調査人口が用いられているようだ。
前回でも触れたとおり、最高裁は、最判平成7年2月28日民集49巻2号639頁で、国民主権の原理やこれに基づく憲法15条1項の規定の趣旨に鑑みると、憲法93条2項の「住民」は、自治体の区域内に住所を有する日本国民を意味するとして、外国人住民は含まれないとするが、地方自治法の「住民」には外国人も含まれるとされており、また、国民主権と地方自治の関係は明らかではないものの、同判決は、地方自治の保障の趣旨から、自治体の長・議員の選挙権を一定の永住外国人に認めることは憲法上許容されるとしている。定数やその配分の基礎となる人口に外国人住民が含まれたものを用いることが許されないわけではないだろうが、議論を生じうるところではある。