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2022.12.26 議会改革

第34回 議員定数の問題にどう臨むか

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 そのほかに、兵庫県議会選挙について、最判平成元年12月21日民集43巻12号2297頁が特例選挙区4.52倍・それ以外3.81倍を違法状態としたものの、国勢調査の結果が告示されたのが選挙の8か月余前であったことを考慮し、合理的期間内に是正されなかったとはいえないとされた。特例選挙区以外の最大較差で適法とされたもののうち最も大きいのは、愛知県議会選挙に関する最判平成5年10月22日民集47巻8号5147頁による2.89倍である。
 他方、指定都市議会選挙については、名古屋市議会選挙に関する最判平成8年9月24日裁判集民180号423頁が最大較差1.73倍、最判平成13年12月18日裁判集民204号379頁が補選における1.81倍を適法としている。
 これらも含め、これまで出された22件の最高裁判決のうち、違法判決が4件、違法状態判決が1件、適法判決17件といった状況である(25)
 なお、特例選挙区について、最高裁は、千葉県議会選挙平成元年判決で、都道府県議会において、当該都道府県の行政施策の遂行上当該地域からの代表確保の必要性の有無・程度、隣接の郡市との合区の困難性の有無・程度等を総合判断して、特例選挙区設置の必要性を判断し、かつ、地域間の均衡を図るための諸般の要素を考慮した上でその設置を決定したときは、その設置は原則的には都道府県議会に与えられた裁量権の合理的な行使として是認されるとする一方、当該区域の人口が議員1人当たりの人口の半数(配当基数0.5)を著しく下回る場合には、その設置は認められないとの判断を示した。さらに、愛知県議会選挙平成5年判決では、当該都道府県の行政施策の遂行上当該地域からの代表を確保する必要性の有無・程度、隣接の郡市との合区の困難性の有無・程度等に照らし、当該都道府県全体の調和ある発展を図るなどの観点からする裁量権の合理的な行使として是認されるかどうかによって決すべきとする判断枠組みを示した上で、配当基数が0.5を著しく下回っても直ちに違法となるのではなく、議会の判断が合理的裁量の限界を超えているものであることが推定されることが明確にされ、配当奇数0.31程度の数値でも設置が許されない程度にまでは至っていないとした。
 このように、特例選挙区がある場合に人口の最大較差が大きくなることを容認するが、配当基数が0.5をどのくらい下回れば裁量権の範囲を逸脱したとされるかは明らかではない(26)。ただ、特例選挙区については、最高裁判決の中でも批判的な少数意見として、裁量統制の必要性を説く意見、実質的な根拠が必要とする意見、過度的な特例措置と捉える意見などもあり、学説の中には、島しょ部のような特殊事情がある場合に限定解釈すべきとしたり、公職選挙法271条の憲法適合性を問う議論も見られる。
 三重県議会の選挙区及び定数に関する在り方調査会報告書(2020年10月20日)において2019年の統一地方選挙に向けた調査のデータを基に作成された「都道府県議会議員選挙の状況(最大較差)」の図表によれば、特例選挙区を設置しているのは東京都、兵庫県、徳島県であり、また、特例選挙区以外で最大較差が3倍を超えているところはなく、最も大きいのが神奈川県の2.99倍、次いで北海道の2.94倍、三重県の2.93倍などとなっており、2倍を超える団体数は24である。他方、最大較差が最も小さいのは沖縄県の1.21倍、次いで佐賀県の1.48倍であり、2倍未満の団体数は23となっている。指定都市の場合には、選挙区間の較差は比較的小さいことが多いようであるが、それでも、最大較差が2倍を超え、逆転現象を生じることなども見受けられる。
 衆議院の小選挙区については、衆議院議員選挙区画定審議会設置法で最大較差が2倍未満とすることが規定され、また、最高裁は、衆議院だけでなく、参議院選挙区選挙についても、投票価値の平等を重視し、従来と比べ厳しい姿勢を示し、違憲状態判決によって国会の側が対応を迫られるようにもなっている。都道府県議会選挙等に対しては、そのような変化は見られないが、その場合に、議員の代表としての性格をどう捉えるかの問題はあるものの、投票価値の平等を重視する動きと無縁とする特段の理由は見当たらないようにも思える。投票価値の平等は民主政治の基本をなすものとして憲法上の要請であるが、それが公職選挙法の規定により変容されているところもあり、その合理性自体が今後問われていく可能性もある。自治体議会としては公職選挙法の規定に従ってさえいればよいというわけではないだろう。

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