早稲田大学マニフェスト研究所事務局次長/招聘研究員 青木佑一
2019年の統一地方選挙からの3年間は、コロナ禍に翻弄(ほんろう)された日々だった。本稿では、多様な課題に向き合い続けたこの間を振り返りつつ、自治体議会の現状を整理し、来春の統一地方選挙で問われるべき課題や今後の方向性について述べてみたい。
「議会の機能を維持するための準備はできているか?」
上記は、2022年7月に開催した全国地方議会サミット2022での廣瀬克哉・法政大学総長の講演内容である。
2019年1月から世界は一変した。コロナ禍により、人と人の関わり方が変わり、住民の暮らし、経済のあり方が激変した。緊急事態宣言の経験を経て自治体DX(デジタル・トランスフォーメーション)が加速。学校の授業のオンライン化、RPAやAIの活用、リモートワークや複数拠点生活、自動運転やドローン活用など様々なことが試行されている。
生活や行政への影響でいえば、例えば複数拠点生活が当たり前になれば、「ひとところに留まる」という「定住人口」という言葉から、「関係人口」が新しい常識になるだろう。さらに石川県加賀市が導入した「電子市民制度(e-Residency)」など、市域・県域・地域を超えた行政運営や住民税など税のあり方も広く問われてくるだろう。
コロナ禍により、議会のあり方も根本的に問われた。住民対話ができず、議会を開催できず、議員が集まれなくなった。議員同士の議論ができず、各地で専決処分が多発したが、多くの議会では、“問題なく”というと語弊があるが、つつがなく行政運営がなされたと見える。2006年に北海道栗山町議会から始まる「議会改革」により議会活動は改革・改善を重ね、変化してきた。それでもコロナ禍は、「住民生活の変化に対応できない議会は不要である」ということを突き付けたのではないか。
なお、緊急事態における議会運営の持続可能性の確保は、コロナ禍以前から問われていた。度重なる大地震や豪雨災害が多発する中、非常事態に議会はどう備え、対応すべきか。弊所では毎年、全国の地方議会を対象に実施している議会改革度調査の結果をもとにテーマ分析「災害と議会」を取りまとめて発表しているが、2018年1月には、「災害時など非常事態における議会の行動指針、議会BCPの導入」や「ICT活用の環境づくり」などを提言している。地震や災害は当事者でなくても、他山の石として備えることができる。あることの備えは、次の事態への備えにもなる。
≫ http://www.maniken.jp/gikai/2016_saigai.pdf