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2022.11.25 政策研究

第10回 有機農業の普及で健全な地球環境の実現に貢献しSDGs達成を(1)

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前所沢市議会議員 木田 弥

【今回のテーマから考えられる一般質問モデル案】
○農林水産省が発表した「みどりの食料システム戦略」では、有機農業についてどのように位置付けているのか?
○有機農業はSDGs(持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)のどの目標達成に該当するのか?
○有機農業は本当に健全な地球環境の実現に有効なのか? GHG(温室効果ガス)排出量削減には有効なのか?
○有機農業の定義は?


 前回は、我がまちからのGHG排出量を削減するために、地域新電力会社を設立、出資するのは、あまり得策ではない、という考え方を、「脱炭素先行地域」計画などの実例を交えて紹介した。
 今回からは、特に有機農業の推進によって、環境への負荷を軽減して、健全な地域環境、ひいては健全な地球環境の実現に貢献し国連の定めたSDGsを達成することが可能なのか、また、有機農業の推進のために我がまちではどんなことをなすべきかについて確認する。

農林水産省も本腰を入れ始めた有機農業の拡大

 最近は多くの議員が有機農業に関心を深めているようだ。筆者もある市の議員から「有機農業の推進を議会でも一般質問で取り上げたい」という相談を受けたところである。
 これまでは“有機農業”というと、どちらかといえばマイナーなテーマという印象があった。ところが、ここにきて農林水産省も本腰を入れて、有機農業振興に取り組み始めた。農林水産省は、「みどりの食料システム戦略」を2021年5月に発表した(1)
 「温室効果ガス削減」や「環境保全」のために重点的に取り組むべき項目と、それぞれの具体的な目標数値を掲げている(表)。これ以外にも、「林野・水産」、「食品産業」の目標設定がなされている。


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出典:農林水産省「みどりの食料システム戦略」(https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/attach/pdf/index-74.pdf

表 「みどりの食料システム戦略」が2050年までに目指す姿と取組方向


 有機農業については、中間目標の2030年までに6.3万ヘクタールに、2050年までに耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%、100万ヘクタールに拡大することを目指すというKPI(重要業績評価指標)を示した。2017年現在で、有機農業を実践している耕地面積は2.35万ヘクタールしかないので、相当意欲的な目標といってよいだろう(2)
 これまでは、それほど有機農業に前向きとは思えなかった農林水産省が、ここにきてなぜこんなに力を入れ始めたのか。
 一つには、欧米をはじめ世界各国が有機農業拡大に本腰を入れ始めたことが原因として考えられる。例えばEUでは、2020年に「Farm to Fork戦略」を策定。2030年までに化学農薬の使用及びリスクを50%削減、有機農業を25%に拡大させることを目標とした。米国もバイデン政権に交代後は、有機農業転換を明確に目指す政策に転換しつつある。中国も中国共産党中央が、年初に打ち出す最も重要な政策文書である「中央一号文件」に、環境保全型農業の発展(≒有機農業)を記している。
 また、SDGsが広く支持されるようになったことも背景にはあるだろう。もっとも、どの目標が有機農業に該当するかは議論があるところだ。IFOAM(国際有機農業運動連盟)では目標2、3、6、12、13、15が該当するとしているようだ。
 「目標2 飢餓をゼロに」は、ターゲットに「生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する」を掲げていることから、有機農業は該当するといってよいだろう。
 「目標12 つくる責任つかう責任」は、生産者として、より安全な農産物を生産する意味でいえば、該当するだろう。
 「目標15 陸の豊かさも守ろう」は、「生物多様性の損失を阻止」が目指されていることから、確実に該当する。
 一方で、「目標13 気候変動に具体的な対策を」に該当すると農林水産省も主張しているし(有機農業に取り組んだ場合の単位当たりGHG排出削減量0.93tCO2/ha/年)、必ずしも否定しないが、農業からのGHG排出量削減を主目的とするなら、有機農業推進より、後述する稲作由来のCH4(メタン)削減の方が費用対効果は高い。
 むしろ有機農業の推進は、生態系の維持や生物多様性の保全を主目的と考えた方が理解しやすい。
 いずれにせよ、国のお墨付きを得たせいか、これまでであれば、“有機農業”について質問したくても、何となく特定のイデオロギーの支持者のように誤解されたくないと考えていた議員にも関心が広がりつつあるようだ。
 一方で、有機農業について書かれている議員のブログなどをいくつか読んでみると、正確に理解されていない傾向も見られる。有機農業は環境に良い、だからGHG排出量削減にも有用だ、という単線的理解である。
 なぜそうなるかといえば、農業そのものについてよく理解されていないことが原因だと思われる。そこで、より実効性のある質問をしていただくためにも、有機農業についてなるべく客観的に理解してほしい。

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