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2022.11.25 議会改革

第33回 国等の政策にコミットする

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 このことからも、それぞれの府省は情報提供を必ずしも十分には行っていないことがうかがわれ、その改善が求められるといえるが、その一方で、地方六団体の側も受け身に徹するのではなく、適宜、情報収集を行い、府省の側から情報提供がなされないようであれば、自ら情報提供の申入れをすることなども必要だろう。
 地方六団体のそれぞれのホームページを見ると、単独で、あるいは共同して、広範に、地方自治にかかわる国政事項について、決議、提言、要請などを行っており、その活動は活発といえるが、整備されてきている国政参加の手段については、なお十分には使いこなせていないところがあることなどが指摘されており、その活動が一部で見られるような一種の利益集団的な活動などと目されないためにも、今後の積極的かつ有効な活用が期待されるところだ。

(1) 第147回国会・平成12年5月23日参議院地方行政・警察委員会(会議録12号)における法案提出者である衆議院地方行政委員長の説明。
(2) 衆議院先例集(平成29年版)399、参議院先例録(平成25年版)412。衆議院先例集では請願の節に、参議院先例録では請願等の章に請願と節を分けて規定されている。
(3) 請願書、陳情書、決議書等と同じ取扱いのことであり、その取扱いについては、「請願書の処理について」(2001年1月6日内閣総理大臣決定)で定められている。
(4) 野村稔「議長の権能と役割」西尾勝=岩崎忠夫編集『地方政治と議会』(ぎょうせい、1993年)121~122頁は、中央省庁に対する意見書の提出は、郵送されるものが多い一方で、議長が上京して直接内容を説明し実現を要請する面接要望も行われているものの、議長が上京しても意見書を受理するだけであったり、「3分陳情」に終わったりすることが多いことも指摘する。
(5) 野村・前掲注(4)は、「可決するまで会派、議員間で案文を調整し相当のエネルギーを費やすが、可決したあと実現への努力は意外と低調である」と指摘する。
(6) 同議会の「地方議会が提出する意見書の積極的活用を求める意見書」による。
(7) 参議院行政監視委員会調査室「地方議会からの意見書(1)~(5)─参議院が受理した意見書の主な項目(令和3年)─」立法と調査444~448号(2022年)。参議院行政監視委員会調査室では、2019年以降に提出された意見書について継続的に分析を行っており、2020年の意見書については、「新型コロナウイルス感染症対策をめぐる地方の諸課題」立法と調査433号(2021年)及び「地方議会からの意見書(1)~(4)」立法と調査435~438号(2021年)、2019年の意見書については、「地方議会からの意見書(1)~(5)」立法と調査422~426号(2020年)参照。
(8) 前掲注(7)・地方議会からの意見書(5)。
(9) 2000年までは国会には意見書を提出できなかったため、決議の形をとったものといえるが、1990年代の決議については、在日本大韓民国民団の働きかけを受けたものが多かったといわれる。自治体議会の関連決議の件数については、同中央本部が集計を行っており、それによれば、1995年4月現在で19県・201市・144町・32村の議会で決議が行われたという数字が残っている。
 他方、1990年代には、外国人選挙権に関する訴訟も相次いで提起され、最高裁は、最判平成7年2月28日民集49巻2号639頁で、国民主権の原理やこれに基づく憲法15条1項の規定の趣旨にかんがみると、憲法93条2項の「住民」は、自治体の区域内に住所を有する日本国民を意味するとする一方で、地方自治の保障の趣旨から、自治体の長・議員の選挙権を一定の永住外国人に認めることは憲法上許容されるとの判断を示した。これを受けて、一部の政党から、国会に、永住外国人に地方選挙権を認めるための法案も提出されたが、最高裁平成7年判決の評価や国民主権との関係などに関し議論が分かれ、日本を取り巻く国際的状況や安全保障の問題なども絡んで、この問題をめぐる政治的な対立が強まることともなった。
(10) 地方議会研究会編著『議員・職員のための議会運営の実際23』(自治日報社、2008年)278~279頁。
(11) 野村・前掲注(4)参照。
(12) 野村・前掲注(4)122~123頁。
(13) 塩野宏『国と地方公共団体』(有斐閣、1990年)19~21頁。
(14) 磯部力「自治体の国政参加」松下圭一=西尾勝=新藤宗幸編『自治体の構想2 制度』(岩波書店、2002年)48~49頁。
(15) 戸谷雅治「『国と地方の協議の場』の課題」年報公共政策学13号(2019年)239~257頁参照。
(16) 例えば、ドイツ連邦議会では、その議事規則により、地方自治体の利害に重要なかかわりをもつ議案を審議するに当たっては、地方自治体の連合組織に見解を表明する機会が与えられなければならないものとされている。
(17) なお、都市再生特別措置法5条2項では、その意見の尊重義務も規定されている。
(18) 認定自治体は11道県227市町村とされている。このほか、2012年の福島復興再生特別措置法でも、福島県知事が福島復興再生特別意見書を国会に提出できることとしている。もっとも、これまでのところ、活用された例はほとんどないようだ。
(19) 地方自治法147条の長の代表権や149条の担任事務の規定を根拠として長が意見を表明することになるものである。
(20) 日田市が競輪の場外車券売場の設置に関する通商産業大臣の許可処分の無効等を訴えた日田サテライト事件で、自治体に重大な利害をもたらす国の権限行使に際しては、その手続において関係自治体の意見を聴取しそれに配慮することが要請され、自治体にはそうした手続的参加権が認められると解するべきであり、本件許可処分の前に告知、弁解、防御の機会を権利として与えられるべきであった、公の施設の区域外設置が関係自治体間の協議によるべきことを規定する地方自治法244条の3の趣旨を場外車券売場の区域外設置にも適用し、地元自治体との協議が不可欠と解すべきであり、そのような協議を受けるべき地位は法律上保護された利益といえるなどとする日田市の主張に対し、大分地判平成15年1月28日判タ1139号83頁は、同車券売場が設置される地元自治体にはその無効確認及び取消しを求める原告適格がないと判断した。
(21) 権限移譲については、全国一律に行うことが基本とされているが、一律の移譲が難しい場合には、希望する自治体に選択的に移譲する「手挙げ方式」も導入されている。

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