2022.11.10 政策研究
第11回 政策(教育委員会〈学校〉・環境・廃棄物・上水道等)と議会の責任・権限
行政委員会とは、委員の選出において議会の役割は大きい
行政委員会とは講学上の概念であり、本稿では地方自治法180条の5に規定される委員会及び委員をいう。行政委員会は、政治的中立性や公平性が求められる分野、慎重な手続を必要とする特定の分野に限って設置される。
執行機関として法律の定めるところにより都道府県・市町村に置かれる行政委員会及び委員には、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会又は公平委員会、監査委員がある。都道府県のみに置かれる委員会には、公安委員会、労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会があり、市町村のみに置かれる委員会には、農業委員会、固定資産評価審査委員会がある(ただし、東京都の23区では固定資産税業務を都が所管しているため、固定資産評価審査委員会も23区には設置されず、都に設置されている)。
これら行政委員会の委員については、議会の同意を得て長が任命したり、議会における選挙で決定されるなど、議会の役割は大きい。
教育委員会は機能しているか、事務局依存の帰結は、求められる「適正に考える力」
ここでは、行政委員会の一つとして教育委員会を取り上げる。教育委員会は、本来の機能を発揮しているのだろうか。
礒崎初仁によれば、教育委員会は、①教育の政治的中立性を確保すること、②合議制による慎重な意思決定を行うこと、③専門家の判断によらず一般人たる住民の意思を反映させること、を目的とした行政委員会である。その背景には、一般人(レイマン)である非常勤の委員が大所高所から基本方針を決定し、それを専門家たちが執行するというレイマン・コントロール(一般人による制御)の考え方があるとされている(礒崎 2020b:176)。
そして、教育委員会は、「適正に機能しているか」という議論がある。礒崎によれば、教育委員会は、政治的中立性を求めた結果、住民の参加・統制からも距離を置くこととなり、国の統制をストレートに受けるとともに、委員が「素人」であるがゆえに、事務局組織に依存する結果になったと思われると述べている。そして、教育委員会に求められるのは、首長・議会との協議や住民の参画を進めることであろうとしている(礒崎 2020b:178)。
確かに、教育委員会の委員は「素人」であるがゆえに、教育長や事務局組織に依存する結果となりやすい。これはレイマン・コントロールを前提にすればやむをえないともいえよう。しかし、一般人であっても、それぞれ真剣に日常を過ごしていれば、委員が事務局と議論をすることは可能である。むしろ、真剣に日常を過ごしているとはいえない者が委員になっていることが問題である。その背景には、首長が任命する委員の同意を議会に求めるに際して、委員の能力でなく、委員の首長親和性を配慮するという選出過程に問題があろう。
教育委員会が、教育長や事務局組織に依存するという問題の帰結の一つとしては、「いじめ(=心理的虐待)」等の現場の問題・事件が顕在化しにくいという面がある。仲間意識のある当該教育委員会や学校で発生した案件については、「穏便意識」、「隠ぺい意識」が働くためである。しかし、このような「穏便意識」、「隠ぺい意識」が重なると、小さな問題もやがて大きな事件につながる。しかし、教育委員会や学校に「適正に考える力」が備わっていれば、これらの問題・事件を避けることができる。「適正に考える力」を備えるためには、教育委員会や学校が自ら学習(再発防止〈予防・対処〉研修等)することである。「適正に考える力」を備える必要性は議会にも当てはまる。